第13話

第13話 perfect as four
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2020/11/02 15:46
 正直、魔力は自信なかった。精霊が手伝ってくれることはあっても、どうしても火属性しか習得できなかったし、それがコンプレックスでもあった。
 ガシマさんの魔法指導はほんと丁寧で、火属性が強いのはそれはそれで大きな力だと教えてくれた。
 でも、どこかそれでも足りないと感じていたけど、俺の迷いはすぐにふみやに見破られていた。
ふみや
だから、僕たち4人でやるんでしょ?
こうすけ
えっ?
ふみや
迷ってる顔してるから
こうすけ
あ、まぁ
ふみや
ほら、構えて、やろう
 ギルドの魔法練習室。ここは魔法をいくら打ち込んでも壊れない結界が張ってある。
ふみや
僕は、まだ魔法をそれほど使えないけど
 的に向かって青い炎を打ち込む。しかし、的の中央から外れている。
ふみや
武器も陣形も魔法も全部、期待しかない。本田くんは?
こうすけ
俺も、それはそうだよ。すげーワクワクしてる
ふみや
じゃ、悩むより動く。しゅうたやかつ君に負けてらんないよ
 次にふみやが打ち込んだ青い炎は的の中心を射抜いた。
ふみや
うかうかしてたら置いていくよ、本田くん
こうすけ
なんだよ、見とけよ
 こうすけが手から放った炎は竜の形となり的の中心に向かって飛んでいった。
ふみや
ガシマさんも言ってたじゃん。その力はでかいって
こうすけ
そうだな…
ふみや
まったく、本田くんは悩み出したら止まらないんだから
 ふみやは再び魔法を打つ。的の中心を的確に狙えるようになっていた。
ふみや
大体、僕が青やめようかって思ったの止めたの本田くんだよね?本田くんは真っ赤な赤じゃないと困るんだけど。しかも僕たちに相談もしないで悩むから
こうすけ
ふみや、なんか怒ってる?
ふみや
なんか、こんな楽しい状態で悩んでるのは見たくない。悩むならみんなで悩もう、行こ
 ふみやはこうすけの腕を掴むと精神統一した。
 そして…

 真っ白な空間に飛び込んだ。
しゅうた
うわ、ビックリした
かつなり
いきなり来るんやもん
ふみや
さ、悩むならここでどうぞ
しゅうた
ふみや、怒ってる?
こうすけ
なんか、怒らせちゃって
かつなり
まぁ、ふみやの気持ちもわからんでもないなぁ
こうすけ
あっ、もしかしてまた?
かつなり
いや、読んでないけど飛んでくる
こうすけ
いやいや、すごい…
しゅうた
え、なに?どういうこと?
かつなり
まぁ、型合わせしよか。多分、それで変わるはず。しゅうた、まだいけるか?
しゅうた
あぁ、全然大丈夫
かつなり
ふみやも、やるために来たやんな?
ふみや
もちろん
かつなり
じゃ、本田くんも一旦本気でやってくれん?俺らも本気でやるから。
こうすけ
あぁ、わかった。
 4人は位置につき型合わせをする。先程までずっと合わせていたかつなりとしゅうたは汗だくだったが動きは機敏でしっかりとしていた。4人で合わせたのが初めてとは思えないほどしっかりとぴったりと合っていた。
しゅうた
やっば、めっちゃ楽しい
かつなり
ほんま、これはやばいわ
しゅうた
どう、こーすけくん?心配吹き飛んだ?
こうすけ
ごめん、ふみや、俺が悪かった
ふみや
ね?楽しいでしょ?
こうすけ
やっぱり俺、お前とシンメやりたいわ。やっぱり、4人でやりたいわ
しゅうた
そんなことわかってるけど
かつなり
ほら、本田くん魔力が心配だったねんな?
ふみや
で、ずーっと悩んでたの
こうすけ
いや、なんか俺の魔法は火属性だけだし?なんかみんなの足引っ張りそうだなーって、いや、やっぱり、リーダーだからみんなを引っ張っていかなきゃいけないのにリーダーの俺が引っ張っちゃいけないよなーって考えたりして、でも、俺の魔法は強いって誉められたけど、でも俺全然そうは思えなくて、でも、やっぱり…
しゅうた
長い!
ふみや
そして、全然解決に向かわない
しゅうた
でも、で、戻っちゃってんのよ
かつなり
本田くんは今のままでも全然強いと思うで?
こうすけ
いや、でも…
ふみや
もう戻らなくっていいから
しゅうた
楽しかったんでしょ?
かつなり
まずは本田くんは楽しまんとあかんねん
こうすけ
えっ?
かつなり
死神と戦ったとき、楽しかったやんな?俺ら最強って思ったやん
しゅうた
確かに、誰にも負ける気しなかったよね
ふみや
全然攻撃効いてないのにね
かつなり
多分やけど、そこが俺らの強さやと思う
こうすけ
俺らの強さ?
かつなり
もちろん切磋琢磨する部分も大事やけど、本田くんは合わせようとしすぎたり出来ないとこをどうにか出来ないかを考えたりしてへん?
しゅうた
確かに、そうかもなぁ
ふみや
無理にしゅうたやかつ君のレベルの魔力を欲しがったり
こうすけ
いやいや、さすがにそこまでは思ってないって
かつなり
でも、俺が思うに本田くんはそういう技術を伸ばすタイプじゃなくって経験で会得してくタイプやと思うんよ
しゅうた
俺は完全に技術型だけどなー
かつなり
でも思い当たる節あるやろ?
しゅうた
もちろん、思い当たるとこしかない
こうすけ
まじか
ふみや
だから、もっと楽しめって言ってるじゃん
かつなり
しゅうたとも話したけど、みんなで居るのは楽しいんよ。一緒に出来るのが嬉しいんよ。それがパワーになってんねん。
しゅうた
そうそう、俺らは4人でピターッてはまったようにしっくり来たって言うか、4人だからなんでも出来そうって思うよ
ふみや
だから、僕たちはきっと楽しめば楽しむほど強くなれる。こんなに楽しくてワクワクする状態なのに、もったいないよ
こうすけ
みんな…
かつなり
俺にもよく言ってくれてんけど、自信もたなな
しゅうた
こーすけ君は笑った方がかわいいですよ
ふみや
悩んでる時は逆に怖いからね
しゅうた
そうそう、怖い怖い
かつなり
いや、怖い言うなって
しゅうた
かつ君だって第一印象怖いだったじゃん
かつなり
いや、それは全員やん
ふみや
言えてる!
しゅうた
いや、そこ否定しよう?
ふみや
ね、本田くん
こうすけ
お前らー、好き勝手言いやがって
しゅうた
それはこーすけ君が悪いですよ?
こうすけ
わかったわかった、ごめん
ふみや
じゃ、もう一回合わせてみる?
かつなり
せやなぁ
しゅうた
一回と言わず何度でも?
ふみや
一晩中でも付き合うよ
かつなり
一晩中は言いすぎやて
こうすけ
そうだな、やろう
しゅうた
えー、一晩中?
こうすけ
さすがに一晩中はやらないけど
ふみや
僕はやってもいいけどね
しゅうた
ふみや体力お化けー
かつなり
軽い悪口やで
 笑いながら型を合わせ始めた。何度も同じ動きをしながら、時には真面目に時には笑ってやり続けた。迷っていたこうすけも迷う暇がないほど笑っていた。
こうすけ
俺らって、4人で完璧なんだな
しゅうた
何を今さら
ふみや
分かってなかったのは本田くんだけだよ
かつなり
まぁ、隠し事は出来ひんからな?悩むなら相談してな
こうすけ
そうだったな、ありがとう
 ふみやはあの時、悩むこうすけを見守るしか出来なかったことを少しだけ後悔していた。今、悩むこうすけを見てなにか出来たことが少しだけ嬉しくて、あの時よりずっとずっと仲間になれてると自信を持ったのだった。

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