第9話
球児の責任と先生の責任
茉子は泣きながら家に帰った。
親はもう仕事に行って居らず茉子はひとりで部屋の布団に潜り込み泣いた。
ピンポーン
静かな部屋にチャイムが鳴り響いた。
茉子は涙を拭いながら玄関へと向かった。
そこにはさっきすれ違った男の姿があった
その男は野球部顧問で茉子のクラスの担任の西城誠だった。
昨日は仕事の都合で部活に行けなかったそうだ。
誠は茉子の手を取り歩き出した。
向かっているのは学校だった。
それを察した茉子は必死に手を振り払おうとした。
言っている間に学校についてしまった。
誠は茉子の手を引き第2グラウンドへと向かった。
誠はそういうと茉子にあるものを差し出した。
それは真新しいグローブだった。
茉子は言われるがままグローブを受け取り10メートルくらい離れた場所まで走った。
誠はそう言いボールを投げた。
茉子はそれを取りなげかえす。
しばらく無言のキャッチボールが続いた。
茉子は浮かない顔でボールをとった。
すると誠はキャッチャーの構えをしてその場に座った。
茉子は溜めていたものを全てだすようにしてボールを投げた。
スパーンと言う音が響きわたる。
誠は珍しく真剣な表情で茉子を見た。
茉子が目を見開いた。
茉子は大声で泣いた。
声が枯れるまで。
誠は何も言わずずっと傍に居た。
グラブとスパイクの事で野球を辞めたいと思った茉子だが誠の言葉でもう一度野球をしたいという気持ちが湧いて来たのだ。
茉子はそう言って笑った。
だがこの時ふたりは知らなかった…
このいじめがこれからだと言うことを…
そして…もっと最悪な事態が起こることを…