何故か 、扉の前で座ってる高橋くんがいて 、目が合った 。
直ぐに逸らされてしまったけど 。
鞄に付けられたあのキーホルダーが音を立て 、高橋くんは立ち上がる 。
足を動かして 、何も言わず私の横をとおりすぎて行く 。
その時 、
___ この世界は2人だけのもののようだった 。
ピタリと止まったその足は 、すぐにまた動き出して行く 。
私から逃げるように 、避けるように 。
見えなくなっていく彼の背中を見つめ 、
私は立ち尽くしていた 。
誰 ? 高橋くんが座っていた扉の前の表札に書かれていたのは 、
高橋 でもなく 、あの頃の名字でもなかった 。
そう言えば ... 、名字が変わったってっことは離婚しちゃったのかな 。
あんなに 、仲のいい夫婦だったのに 。
きょ ー ちゃん は今でも 、ここに来るのだろうか 。 なんで ? もうここに住んでないのなら 。
なぜ 、ここに座っていたの ... 。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。