第8話

二度目の恋
32
2021/10/30 09:00
翌日。
俺は仕事が休みだが、休日出勤するつもりで支度をする。
休暇は怪我や病気で入院した時のための備えだからな…
あと、これといって趣味もないし。
朝食を軽く食べ、皿洗いをしていると…
ピンポーン。
理央
理央
こんな朝早くに何だ?
インターホンが鳴ったので、玄関へ向かうと…
ガチャッ。
聖月
聖月
お邪魔しま〜す♪
理央
理央
あ、ちょ、聖月⁉︎
俺が玄関に着く前に勝手にドアを開け、聖月が入ってきた。
聖月
聖月
あれ?理央
今日仕事休みじゃないの?
理央
理央
休日出勤しに行くんだよ
というかその前に勝手に部屋に上がるな
聖月
聖月
え〜いいじゃーん私達の仲なんだしさ〜
てか今日社長が重要な会食みたいで代理の人とか全員連れて行ってるから会社入れないよ
理央
理央
…そうなのか
…って、人事部の俺も知らないことをどうして聖月が知ってるんだ…
理央
理央
で、お前は何の用だ?
ネクタイを解きながら聖月に話しかける。
聖月
聖月
え⁉︎ちょっとここで脱がないでよ!
理央
理央
別に着替えるだけだしいいだろ
で、何の用なんだ
聖月
聖月
えぇ…いや、美容室行くから一緒に来てくれないかな〜って
聖月が目を手で覆いながら話す。
理央
理央
…俺が行く必要はあるのか?
聖月
聖月
理央に意見を聞きたくてさ〜
…ねぇまだ着替えてる?
理央
理央
別に着替え見るくらい何でもないだろ
お前がいう「俺達の仲」なら
聖月
聖月
〜〜っ!
それとこれとは別!
聖月の顔が、覆った手の隙間から赤くなっているのが見える。
…案外、こういうの慣れてないのか?
理央
理央
…聖月って今まで彼氏とかいなかったのか?
聖月
聖月
…いないわけではないけど、長く続いてない
聖月が少し躊躇うように言う。
聖月
聖月
理央こそさ!
めちゃくちゃモテるし彼女いたんじゃないの⁉︎
理央
理央
………
聖月
聖月
え?なんで黙るの?
理央
理央
…お前と別れてから、誰かと付き合ったことも、好きになったこともない
聖月
聖月
…え…
理央
理央
それくらい、聖月と別れたことがショックだったんだよ
何度も気持ちを消そうと思った。
だけど、気持ちがようやく薄れてきた頃に、再び出会った頃を思い出し、それを繰り返しているうちに気持ちをいつまでも引きずった状態になってしまった。
理央
理央
…着替え終わったよ
美容室行くんだろ
聖月
聖月
あ、う、うん…
俺はさっき言ったことが恥ずかしくて、聖月をちゃんと見られないまま外へ出る。
ようやく聖月の後ろ姿を見た時…聖月の耳が赤くなっていた。
理央
理央
お前そんな薄着で寒くないか?
聖月
聖月
へっ⁉︎え、い、いや…むしろ暑いっていうか…
聖月が過敏に反応する。
理央
理央
耳が赤くなってるし…
風邪引いたらダメだろ、これ着ろ
俺は、自分が来ていたジャケットを後ろから聖月の肩に掛ける。
聖月
聖月
あ、ありがとう…
聖月は、いつものようなハキハキした調子ではなく…昔のような、大人しい調子で小さく呟く。
あーやばい…やっぱりこれはもう…
聖月
聖月
ていうか、私これ部屋着だったわ!
着替えてくる!
理央
理央
え?あ、おう…
聖月は俺にジャケットを返し、急いで自分の部屋へ駆けこんだ。
…なんだ、部屋着か。
あんな肌を露出させた格好で美容室へ連れて行くまいと思い、ジャケットを着せたけど…着替えてくるなら必要ないな。
安心したはずなのに…どこか寂しい気持ちになる。
理央
理央
…本当、分かりやすいな、俺

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