「ちょっとちょっと小倉さん!」
「女性苦手なんじゃなかったんですか⁉︎」
聖月と別れて部署に戻ると、案の定部下や女性社員に問い詰められる。
「しかも有川さんって…うちの会社のマドンナじゃないですか‼︎」
「じゃあなんでそんなにハイスペックなのに今まで誰とも付き合わなかったんですか‼︎」
…それは恋愛したくないから、と言いたいところだけど、自分から聖月を連れ出しておいてそんなこと通じるわけないよな…
…仕方ない。ひとまず聖月に合わせよう。
「キャーーーーーー‼︎‼︎」
俺がそう言った瞬間、まわりの女性社員から悲鳴が聞こえる。
…これはアイドルの記者会見かよ。
いつも俺の前では必ず笑顔の黒田さんも青ざめている。
俺はまわりに駆けつけてきた女性社員たちを追い払う。
…だから社内恋愛は嫌なんだよ…
…げ。
昼休憩の時間になり、聖月がわざわざ人事部まで俺を呼びに来た。
聖月が腕を絡める。
何もそこまでしなくていいだろ…
どうして女性というのはこんなにも恋愛脳なのだろうか…
俺、そんなに笑ってないのか…?
全然身に覚えがないけど…
聖月が少し寂しそうな表情をする。
ずっと聞かずにいた言葉をついに口に出してしまった。
聖月はしばらくの沈黙の後、少しずつ話し始めた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。