第6話

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2018/01/28 06:01
私の心配とは裏腹に、彼が連れていってくれたのは 駅のすぐそばにある居酒屋だった。
ヒロ
へぇ…フラれちゃったんだ

“ヒロ”と名乗った男は、ビールジョッキを傾けながら 真剣に私の話を聞いてくれている。
あなた

…まぁ、元々 勝算なんてなかったんですけどね

ヒロ
そんなことないよ。
だってあなたちゃん可愛いもん
あなた

…嘘ばっかり。
誰にでもそんなこと言ってるんでしょ?


酔っているせいか、可愛げのない言葉を口にしてしまう。
“そういう”仕事をしているのだから、仕方のないことだということは分かっている。

しかし、軽々しいヒロの言葉が、妙に 癪に触った。
ヒロ
嘘じゃないよ。…ほら

彼はそう言って、そっと私の眼鏡を外した。

ぼやけた視界に 男の顔が写りこむ。
ヒロ
こんなに可愛いのに。…もったいない

“からかわれているだけ”なんてことは分かっているはずなのに、どうしてこんなにも泣きたくなるのだろう。


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