ヒロに連れていかれたのは、街中にあるショッピングモールだ。
若者向けの可愛らしい服がディスプレイされた店に構わず足を運ぶ男は、真剣な眼差しで服を選んでいた。
胸元のレースが上品な 膝丈のワンピースを合わせられ、思わず彼の手を払ってしまう。
無理やりワンピースを渡され、導かれるままに試着室へと向かった。
試着室に取り残された私は、渋々 服を着ることにした。
職業柄か、ヒロはこういう場所に慣れているようだ。店員の目を気にするような素振りも見せないし。
強引さの中に、優しさが感じられるのは、やはり日頃から女の子の相手をしているからなのだろう。
そんなことワンピースを着てはみたものの、体の硬さが災いして背中のチャックに手が届かない。
クスリと笑われ 顔は熱くなり、背中に感じた彼の気配に 耳までその熱は広がった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。