第7話

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2018/02/04 14:35

私の目から零れた涙に、彼はたいそう驚いたことだろう。

差し出されたハンカチからは、爽やかな香水の匂いがした。
ヒロ
ご…ごめんね?
あなた

…いえ…っ、すみません

ずっと我慢していた。
心のどこかで“仕方がない”と思いながらも、“どうしてなんだろう”という気持ちもあった。

恋愛対象ではなかったという悲しみ。
女性として見られていなかったことの悔しさ。

誰かに打ち明けてしまいたかった。
涙に濡れた、私の内側を。
ヒロ
頑張ったね、あなたちゃん

何気ない彼の言葉が、胸に突き刺さって 苦しくなる。



“頑張ったね”


なんて、誰にも言ってもらえずにいたから。


あなた

っ…ぅ……はい…


その一言だけで、私の中の何かが 報われたような気がした。

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