見違えるほど綺麗になった彼女と、最後に訪れたのは、海を一望できる丘に造られた公園だ。
嬉しそうにそう言うあなたは、ベンチに腰をかけ、波の音がする方へ目を向けている。
美容院オリジナルのシャンプーの香りが、ふわりと漂い 俺の胸をドキリとさせる。
彼女を応援する気持ちは、いつの間にか好意へと変わっていた。
『昨日はごめん。あの言葉が本当だったとしたら、俺 本当に最低なことしたと思う。でも、やっぱりあなたのことは部下としか思えない。それに、今 付き合ってる人がいるんだ。だから…ごめん。』
差し出されたスマホの画面には、“彼”からの言葉が書き連ねられている。
彼女にとっては、たいそうショックなものだっただろう。
はぁ、と息を吐いた彼女は、意を決したかのように立ち上がり、こちらを振り向く。
風が吹き、膨らんだスカート。
鞄の中から取り出されたのは、昨日のとは違う チョコレートボックス。
シックなラッピングが施された箱を受け取り、俺は「もちろん」と呟いた。
彼女の体を引き寄せ、抱きしめる。
__永遠に解けない、甘い魔法をかけて。
【甘い魔法をかけて】
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。