そう素直な気持ちを伝えると、彼女は少し困ったような顔をして 俯いた。
どうしてそんなにも自分に自信が持てないでいるのか、俺には分からない。
それでも、背中を押してあげたい。純粋に人を好きになった彼女の背中を。
彼女の肩に白色のコートをかけ、足元にはスエード素材のパンプスを置く。
彼女が靴下を脱ぎ パンプスを履いているあいだに、そばにいた店員に着て帰りたいのだという旨を伝え、支払いを済ませた。
店員がタグを切っているのを、あなたは不思議そうに眺めていたが、状況を悟ったのか 慌てて鞄に手を伸ばした。
彼女が着ていた服が入っている紙袋を受け取り、店を出る。
あなたは慣れないヒールを履いて 少し歩きにくそうだが、その表情はどこか嬉しさを滲ませていた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。