私の肩をがっしりと掴んだ男は、何も言わず 人混みの中を突き進んでいく。
そのお陰もあってか、大通りまでの数分間、キャッチに捕まることはなかった。
明るいネオンの下で見た彼の顔に、思わず顔が熱くなる。
ホストの中でも燻ることのなさそうな派手な顔立ちは、同じ日本人とは思えない。
その問いかけに勢いよく首を横に振ると、彼は「そうだよね」と言って笑った。
何となく飲みたいときは、いつものバーに行くので、帰りにここを通ることは多い。
しかし、どうして彼がその事を知っているのだろうか。
自然に繋がれた手。
酔っているためか、頭はぼんやりとしている。
家に帰っても、どうせ涙で枕を濡らすだけなら、誘いに乗るのも悪くないかもしれない。
あぁでも、変なお店に連れていかれるのは嫌だな。
だけど、少しだけなら…。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。