中から出てきたのは私の元カレだった。
表札を見てまさかとは思ったけど当の本人なんて...。そんな少女漫画みたいな展開ある?普通...。
向こうも驚いた表情で私をまじまじと眺めている。
桃園 さとみ。
私の中学時代の元カレだ。中学の卒業式で別れて以来、一回も連絡したことなんてないのに...。なんで...。
桃野坂大学って...。私が入学する大学じゃん!!うそでしょ!?
私がそう答えると桃園さんは目をきらきらさせた。
あまりにも桃園さんが興奮するから少し引いてしまう。でも、桃園さんは気にしていないようだった。
は?運命?なにバカげたこと言ってんの?
私の表情がこわばっていくのにも気づかないで桃園さんは続ける。
私はそこで我慢できなくなった。頭の中でなにかが切れた気がした。
桃園さんがうろたえる。そんな桃園さんに私はさらに追い討ちをかけるように静かに言った。
桃園さんをチラッと見たけどポカンとこっちを見ているだけだった。
もういいや。これ以上いても仕方がない。帰ろう。
私がきびすを返すと桃園さんに名前を呼ばれた。反射的に振り向いてしまう。
そう真面目な顔で言われた。
でもそんなことしたって...。
私はそれだけ言い残すと、今度こそ自分の部屋に戻って行った。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。