成美は頬を真っ赤にしながら言った。
え?今、一目惚れって言った?一目惚れってあの一目惚れだよね!?
慌てて口をふさぐ。周りも何事かという目で見ているけどそんなことを気にしている余裕はない。
成美はもごもごと言う。ちょっとまって?めっちゃピュアなんだけど!?
これを壊してはいけないな...。うん。
にしても桃園さんかぁ...。まさかのねぇ...。それに手伝ってって言われても...。ってん?
成美は桃園さんが好きなんだよね?それで桃園さんは私のことが好き(たぶん)だよね?そんでもって私は別に桃園さんのことが好きじゃない。それじゃあ、成美と桃園さんをくっつけたら私は桃園さんの迷惑行為から解放されるんじゃ...?
これは...。好都合!!
私が笑みを浮かべると成美も満面の笑みになった。
成美のことも手伝えるし、私も得するし、一石二鳥!
私は心の中で大きくガッツポーズをした。
それから1時間目の講義が終わり、私と成美は廊下に出た。すると、見慣れたピンクの頭がこちらに向かっていた。私の名前を叫びながら...。
桃園さんは私の前まで来ると息を整えてから顔を上げた。
桃園さんはやっぱり不満そう。でもそこで成美の存在に気がついたみたい。
桃園さんに名前を呼ばられた成美はほんのりと赤くなっている。うん。小学生かな?
まぁ、でも成美はそこがかわいいんだけどね。
桃園さんは引き下がる気は全くないみたいだった。本当にめんどくさい...。私、こう見えてめんどくさいことは結構嫌いなんだけど?
と、そこで成美が止めに入ってくれる。
私は桃園さんを振り切るように成美の手を引いて早足で歩き出した。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!