『ぼくはこの世で一輪だけの花を知っていて、
それはぼくの星以外のどこにも咲いていないのに、
小さなヒツジがある朝、なんにも考えずにぱくっと、
こんなふうに、その花を食べてしまっても、
それが重要じゃないって言うの?』
今こんなにヨレヨレになっている俺でも、
昔は子供だった。
親父に買ってもらったロボットを寝るときに
ずっと大事に抱きしめてた。
でも物には限りがあるわけで、いつしか壊れた。
親父は「新しいのを買ってあげるから」って
言ってたけど、その時は本当に宝物で、
これがいい!これじゃなきゃやだ!って、
泣いてた。
そんなことが俺にもあったことを、
この本を読んで思い出した。
トントン
肩を叩かれて意識を戻した。
銀色に輝くスプーンを取って、
オムライスを一口掬う。
頬を生暖かいものが伝う。
久しぶりの手料理だったのだ。
しかも、お袋が作るオムライスに、そっくりだった。
グリーンピースが入ってて、卵はふわふわで。
俺の好みを知ってたお袋が作る、
ケチャップを沢山混ぜ込んだチキンライス。
まんまだった。
また、食べられるとは思ってなかった。
ペロッ
頬を舐められた感触があって、
ぼやけた視界で捉えたのは白いふわふわ。
メグさん、ありがとう。
すぐに完食し、また本を読み始めた。
お昼休憩の時間なんて、気にしなかった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。