第6話

おとなは、だれも、はじめは子どもだった。
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2020/07/24 02:56
『ぼくはこの世で一輪だけの花を知っていて、
それはぼくの星以外のどこにも咲いていないのに、
小さなヒツジがある朝、なんにも考えずにぱくっと、
こんなふうに、その花を食べてしまっても、
それが重要じゃないって言うの?』
今こんなにヨレヨレになっている俺でも、
昔は子供だった。
親父に買ってもらったロボットを寝るときに
ずっと大事に抱きしめてた。
でも物には限りがあるわけで、いつしか壊れた。
親父は「新しいのを買ってあげるから」って
言ってたけど、その時は本当に宝物で、
これがいい!これじゃなきゃやだ!って、
泣いてた。
そんなことが俺にもあったことを、
この本を読んで思い出した。
トントン
南夏目
準備、できました。
八角快人
あ、ありがとうございます。
肩を叩かれて意識を戻した。
南夏目
こちら、オムライスです。
八角快人
美味しそう…
南夏目
それでは。
八角快人
…いただきます。
銀色に輝くスプーンを取って、
オムライスを一口掬う。
八角快人
頬を生暖かいものが伝う。
久しぶりの手料理だったのだ。
しかも、お袋が作るオムライスに、そっくりだった。
グリーンピースが入ってて、卵はふわふわで。
俺の好みを知ってたお袋が作る、
ケチャップを沢山混ぜ込んだチキンライス。
まんまだった。
また、食べられるとは思ってなかった。
ペロッ
八角快人
ん、メグさん…ありがとう。
頬を舐められた感触があって、
ぼやけた視界で捉えたのは白いふわふわ。
メグさん、ありがとう。
八角快人
ごちそうさまでした。
すぐに完食し、また本を読み始めた。
お昼休憩の時間なんて、気にしなかった。

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