第2話

死んでから花をほしがる奴なんているもんか
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2020/07/22 13:28
私の苦手とする楷書が所狭しと並んでいる。
だがそれと同時に主人公、
ホールデン・コールフィールドに惹かれた。
思っていることがほとんど同じだからだ。
『墓地の中に押し込められるのだけはごめんだな。
 日曜日にはみんながやってきてさ、
 ひとの腹の上に花束をのっけたり、
 いろんなくだんないことをやるだろう。
 死んでから花をほしがる奴なんているもんか。
 1人もいやしないよ。』
トントン
南夏目
ご用意、できました。
麻野美琴
え?あ、どうも…
肩を叩かれ意識を戻す。
もうそんなに時間が経っていたのか…
そんな思考を一旦投げ捨て、
本の間の備え付けの紐を挟み、本を閉じる。
南夏目
こちら…
苺のショートケーキでございます。
三角に切られた可愛いショートケーキ。
イチゴがどーんと乗っていて、美味しそう。
麻野美琴
いただきます…
手を合わせ、木で出来た可愛らしいフォークを使って
ひとくち口に放り込む。
麻野美琴
うんまぁ…
ふわふわのスポンジ、甘ったるくないクリーム、
ふわっと広がるイチゴの香り。
あぁ、幸せだ。
ひとくち、またひとくち、と口に放り込んでいけば
あっという間に3割が無くなっている。
麻野美琴
幸せだぁ…
南夏目
紅茶、飲みますか?
お洒落なティーカップを片手にこちらを伺う。
いい匂い…
麻野美琴
飲みます…!
柑橘系の香り…?
南夏目
これはアールグレイと言います。
ベルガモットで
柑橘系の香りをつけた紅茶で、
フレーバーティーの一種です。
麻野美琴
へぇ…
聞きはするけど、こんな感じなんだ…
恐る恐る口に含めば、香りが広がる。
ほっと安心するような紅茶だ。
麻野美琴
はぁ…落ち着く…
南夏目
メグ、おいで。
手招きすればカウンターの上にひょいっと軽々登る。
毛がふわふわで…目が青い。
綺麗だなぁ。
南夏目
では、ここに置いておきますので。
ごゆっくりどうぞ。
ティーポットを置いてまた裏に消えていった。
麻野美琴
続き、読むかぁ…
また私はページをめくり始めた。

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