私の苦手とする楷書が所狭しと並んでいる。
だがそれと同時に主人公、
ホールデン・コールフィールドに惹かれた。
思っていることがほとんど同じだからだ。
『墓地の中に押し込められるのだけはごめんだな。
日曜日にはみんながやってきてさ、
ひとの腹の上に花束をのっけたり、
いろんなくだんないことをやるだろう。
死んでから花をほしがる奴なんているもんか。
1人もいやしないよ。』
トントン
肩を叩かれ意識を戻す。
もうそんなに時間が経っていたのか…
そんな思考を一旦投げ捨て、
本の間の備え付けの紐を挟み、本を閉じる。
三角に切られた可愛いショートケーキ。
イチゴがどーんと乗っていて、美味しそう。
手を合わせ、木で出来た可愛らしいフォークを使って
ひとくち口に放り込む。
ふわふわのスポンジ、甘ったるくないクリーム、
ふわっと広がるイチゴの香り。
あぁ、幸せだ。
ひとくち、またひとくち、と口に放り込んでいけば
あっという間に3割が無くなっている。
お洒落なティーカップを片手にこちらを伺う。
いい匂い…
柑橘系の香り…?
聞きはするけど、こんな感じなんだ…
恐る恐る口に含めば、香りが広がる。
ほっと安心するような紅茶だ。
手招きすればカウンターの上にひょいっと軽々登る。
毛がふわふわで…目が青い。
綺麗だなぁ。
ティーポットを置いてまた裏に消えていった。
また私はページをめくり始めた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。