第15話

お花屋さんの中で
23
2019/07/22 10:20
お昼を少し過ぎた頃。

色とりどりの花に囲まれた、一見普通のこの店──Ropenterロペンター
カウンターの裏にある、カフェテリアのような休憩所。
そこでは、普通ではない話がされていた。


......普通ではないメンバーで。






山本しの
山本しの
──ふー......一気に2つ話したから
疲れちゃった......


小さく伸びをする彼女は、精霊......──山や海などを守るといわれている存在ものだ。

彼女は夏の植物等を担当する精霊で、夏に咲く花の中から「願いの叶う花」を見つけたり、栽培することができる。
香織
おつかれ、ありがとう
......はい、お茶
そう言ってカップを置くのは、この店の店員。

香織、と呼ばれている彼女は、精霊から渡された「願いの叶う花」を客に出す役目をしている。
麗華
やっぱり、最後は人それぞれってことね......
先程置かれたカップを手にしてそう言うのは、香織の姉で、
麗華、と呼ばれている。

同じくこの店の店員。






今はこの3人で、この半年で訪れた「願いの叶う花」を求めた人々の話をしていた。


春と夏、それぞれに訪れた、ある2人の少女。


その2人の話を。






2人ともそれぞれの大切な人への思いと共に、過去へ戻った。
その過程を、結末を、聞いていた。





なぜ過去でのことを知っているのか?


......実は、この店では客には教えないあるルールがある。
それは、


「願いを叶える花を購入した者を、その願いが叶うまで精霊が側で見守る」


こと。



それによって、購入者が現実に戻れなくなることなどを防ぐのもあるし、夏の少女のように、長い期間の願いを叶えるためでもある。





あとは......、過去で何をしたのか、過程をどう変えたのかなどを知るため。

これは、ここの店員が単純に知りたいだけだ。
それがこの店を始めた理由にも繋がっているから。







「自分にとっての幸せを見つける──知るため」






お客様の願いを叶えることで、その人にとっての幸せを知る。
そしてそこから、自分の幸せを考える。

それが、この店を始めるきっかけになった。

名前も、そこからきたものだ。


















──そんな思いを込めて。
今日も、幸せいっぱいの香りをお客様へ──

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