第17話

秋の友達
33
2019/12/29 09:05










気付くと、自分の部屋だった。


手に一輪の白菊を持っていて、ああ、あれは夢じゃなかったんだ、と実感した。


適当に花瓶を持ってきて、そこに花をさす。


あの日、義姉ねえさんがこの花が好きだと言っていたのを思いだした。
普通、悲しい意味で扱われるこの花を......。






すごく綺麗きれいな花だと、そう言っていた。
澤田幸輝
澤田幸輝
義姉さん......




待っていて。
俺が必ず変えてみせるから。














―――――



義姉さんは、漢字の通り俺の義理の姉だ。
母さんが違うらしいことは知っている。

けど、俺は自分を産んだ母さんがどんな人だったのか、何も覚えていない。

だから一緒に暮らしている人を「母さん」と呼ぶのに、正直抵抗はないんだ。


でも「義姉さん」と呼ぶのには少し抵抗があった。

2つ年上だし、態度とか、どちらかというと先輩に近い感じがしたから。





そんなこんなで、いつまでもどう呼んでいいのか分からないままの俺を、彼女は本当の弟のように可愛がってくれた。

澤田理乃
澤田理乃
幸輝くん

そんなふうに俺のことを呼んで、いつも気にかけてくれて、笑顔を振りまいてくれて。



そして、俺に 笑う ということを教えてくれた。





──そんな、大切な、今までに感じたことのないほどに、大切と思えた。

......そんな人なんだ。




だから、だからこそ、俺は──。









―――――








山本想乃
山本想乃
──へえ〜、それが前置き?
澤田幸輝
澤田幸輝
......そうだ
山本想乃
山本想乃
そっか。キミさ......今でも、そんなふうに大切に思ってるんだね
澤田幸輝
澤田幸輝
え......?
山本想乃
山本想乃
気づいてないだろうけど......、泣きそうな顔してるから
澤田幸輝
澤田幸輝
......
いきなりなんだという感じで話をさえぎったこの人とは......、まあ、とある理由で最近仲良く(?)なった。

山本想乃
山本想乃
ふふ。
さ、続き、聞かせて?
澤田幸輝
澤田幸輝
......ああ。
それで──





―――――





──それで、だ。




そんな日々を過ごしていた俺と義姉さんは、多分はたから見ればごく普通の、仲のいい姉弟きょうだいだったんじゃないかと思う。


俺からしたら、それは本当に嬉しいことだった。
......多分、義姉さんもそうだったんじゃないかな。


その頃には俺も、すっかり「義姉さん」という呼び方が定着していたんだけどさ。
俺が初めて「おねえちゃん」と呼んだときのこと、彼女はとっても嬉しそうに話すから。











......だから、さ。







だからこそ、......父さんのしていたことを知った時は、本当に許せなかったんだ。

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