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気付くと、自分の部屋だった。
手に一輪の白菊を持っていて、ああ、あれは夢じゃなかったんだ、と実感した。
適当に花瓶を持ってきて、そこに花をさす。
あの日、義姉さんがこの花が好きだと言っていたのを思いだした。
普通、悲しい意味で扱われるこの花を......。
すごく綺麗な花だと、そう言っていた。
待っていて。
俺が必ず変えてみせるから。
―――――
義姉さんは、漢字の通り俺の義理の姉だ。
母さんが違うらしいことは知っている。
けど、俺は自分を産んだ母さんがどんな人だったのか、何も覚えていない。
だから一緒に暮らしている人を「母さん」と呼ぶのに、正直抵抗はないんだ。
でも「義姉さん」と呼ぶのには少し抵抗があった。
2つ年上だし、態度とか、どちらかというと先輩に近い感じがしたから。
そんなこんなで、いつまでもどう呼んでいいのか分からないままの俺を、彼女は本当の弟のように可愛がってくれた。
そんなふうに俺のことを呼んで、いつも気にかけてくれて、笑顔を振りまいてくれて。
そして、俺に 笑う ということを教えてくれた。
──そんな、大切な、今までに感じたことのないほどに、大切と思えた。
......そんな人なんだ。
だから、だからこそ、俺は──。
―――――
いきなりなんだという感じで話をさえぎったこの人とは......、まあ、とある理由で最近仲良く(?)なった。
―――――
──それで、だ。
そんな日々を過ごしていた俺と義姉さんは、多分傍から見ればごく普通の、仲のいい姉弟だったんじゃないかと思う。
俺からしたら、それは本当に嬉しいことだった。
......多分、義姉さんもそうだったんじゃないかな。
その頃には俺も、すっかり「義姉さん」という呼び方が定着していたんだけどさ。
俺が初めて「おねえちゃん」と呼んだときのこと、彼女はとっても嬉しそうに話すから。
......だから、さ。
だからこそ、......父さんのしていたことを知った時は、本当に許せなかったんだ。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。