第21話

秋の友達
23
2020/05/06 04:00










澤田理乃
澤田理乃
大丈夫だよ......
そう言った義姉ねえさんの顔は、やっぱり強ばっていて、とても大丈夫には見えないんだよな......。



そう感じとった俺は、自然に口を開いていた。
澤田幸輝
澤田幸輝
俺に心配かけさせないつもりなら、今は笑わないで
澤田理乃
澤田理乃
え......
澤田幸輝
澤田幸輝
こういうふうに、俺が追い詰められてる時に笑わせてくれたのは、安心させてくれたのは、義姉さんだよ
澤田理乃
澤田理乃
......
澤田幸輝
澤田幸輝
在り来りかもしれないけど、今度は、俺が義姉さんを安心させてあげたい。
......また、心から笑ってほしい
澤田理乃
澤田理乃
......っ
義姉さんが、下を向いて小さく笑う。

......ぼそっと、なにかつぶやいた。

それは本当に注意深くしていないと聞こえないほどで、俺にもほとんど分からなかった。




......また沈黙が訪れた。

今度も、俺の方からは話しかけないでいると、義姉さんがおもむろに話しはじめた。
澤田理乃
澤田理乃
......こんなこと言うのも気が引けるんだけど
澤田幸輝
澤田幸輝
......うん
澤田理乃
澤田理乃
多分ね、お父さん達を止めるのは無理なんじゃないかなって思うの
澤田幸輝
澤田幸輝
え......それは、どういう......
澤田理乃
澤田理乃
さっき幸輝くんに言われたとおり、私は虐待を受けてる......ってことになるんだと思う
澤田理乃
澤田理乃
具体的なのはあんまり言いたくないけど、身体的にも精神的にも、暴力を受けてるのは確か。
......あ、でも安心して?せーてき?なことはされてないよ
澤田幸輝
澤田幸輝
......
澤田理乃
澤田理乃
ああ、でね、お父さんを止めるのは無理なんじゃ......って言ったのは、多分止めようと交渉とかしても聞いてくれないかもっていうのとか、
あとは............
その先は言わずとも分かった。
きっと、俺にも被害がおよぶってことが言いたいんだ。


義姉さんは、いつも自分のことより人のことを考えてるような優しい人だ。
だからこそ、こういう場面でも自分のことはいいっていう姿勢なんだろう。


......知ってる。

わかってるんだ......っ。
澤田幸輝
澤田幸輝
俺は、大丈夫
澤田理乃
澤田理乃
......えっと、ね、こうきく
澤田幸輝
澤田幸輝
大丈夫。
俺は、そうやって誰かのことを想う義姉さんは好きだよ。
でも、それで傷ついたり無理したりする義姉さんは......、好きじゃない
澤田理乃
澤田理乃
......
澤田幸輝
澤田幸輝
大丈夫だよ、俺は。
やれること、何だってする。
さっきも言ったけど、俺は義姉さんに笑ってほしいんだ。
だから、
澤田理乃
澤田理乃
無理だよ......!
荒らげた声を出した義姉さんは、こちらを見ることもなく、続けた。
澤田理乃
澤田理乃
さっき、幸輝くんが言ったこと、......私が無理してるとか、そういうのは合ってるよ。全部。
でも、私は......
一呼吸おいて、
澤田理乃
澤田理乃
私は、私のせいで誰かが傷つくのはもう見たくないの......!
澤田幸輝
澤田幸輝
............っ
澤田理乃
澤田理乃
幸輝くんが、どれだけ考えてくれたのか、どれだけのことをしようとしてくれているのか、それは分かんないけど、でも
澤田理乃
澤田理乃
私は、幸輝くんが傷ついたら、もっと壊れちゃうよ......?
......。






その言葉は、頭の中を空っぽにしていく。

でも、その表情はなんだか、幼くて。


......どれだけのことを、義姉さんが受けてきたのか。

こわすぎて。
澤田理乃
澤田理乃
......こうき、くん?
ただ衝動的に、義姉さんを抱きしめていた。

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