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そう言った義姉さんの顔は、やっぱり強ばっていて、とても大丈夫には見えないんだよな......。
そう感じとった俺は、自然に口を開いていた。
義姉さんが、下を向いて小さく笑う。
......ぼそっと、なにかつぶやいた。
それは本当に注意深くしていないと聞こえないほどで、俺にもほとんど分からなかった。
......また沈黙が訪れた。
今度も、俺の方からは話しかけないでいると、義姉さんがおもむろに話しはじめた。
その先は言わずとも分かった。
きっと、俺にも被害が及ぶってことが言いたいんだ。
義姉さんは、いつも自分のことより人のことを考えてるような優しい人だ。
だからこそ、こういう場面でも自分のことはいいっていう姿勢なんだろう。
......知ってる。
わかってるんだ......っ。
荒らげた声を出した義姉さんは、こちらを見ることもなく、続けた。
一呼吸おいて、
......。
その言葉は、頭の中を空っぽにしていく。
でも、その表情はなんだか、幼くて。
......どれだけのことを、義姉さんが受けてきたのか。
こわすぎて。
ただ衝動的に、義姉さんを抱きしめていた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!