第22話

秋の友達
22
2020/05/06 04:00










衝動的に義姉ねえさんを抱きしめたまま、空っぽの頭に浮かんできた言葉を吐いた言った



澤田幸輝
澤田幸輝
あのさ、もしかしたら義姉さんは、
「そんなに酷くないよ」
とか、そういうこと言って、俺を止めようとか考えてるのかもしれないけど、
一瞬、びくりと義姉さんの体が揺れる。
澤田幸輝
澤田幸輝
俺は、なにかしないままで後悔したくないし、それに......






「それに」......なんだ?
俺は何が言いたい?


そんなことを考えて、言葉に詰まる。



「義姉さんに伝えたいのは?」










......しっかり義姉さんの表情かおが見えるようにしてから、
澤田幸輝
澤田幸輝
......それに、義姉さんは、笑ってなきゃ
ちょっと照れくさい、そんなことを言った。




義姉さんはしばらく、びっくりしたような顔をして、俺を見ていた。
けどすぐに、それは俺のほしかったものに変わっていく。
澤田理乃
澤田理乃
......ふ〜っ。
そんなこと言うようになったかあ......
少し呆れたような、でもなにか嬉しそうな、そんな、表情かお
澤田理乃
澤田理乃
そういうのは、好きな子に言ってあげなきゃいけないのに
いたずらっぽい顔でそんなことを言って、浅い深呼吸をして、
澤田理乃
澤田理乃
今度は私が笑わせてもらっちゃったなあ......
今度はちょっとうるんだ目で。



......こんな風に表情がコロコロ変わるのを見るのも、なんだか懐かしい。

気が抜けて、俺も笑っていたことに気づく。


澤田理乃
澤田理乃
ありがとう
その顔は、やっぱり俺を安心させてくれて。

次の言葉は、俺にもう一度、決意させた。
澤田理乃
澤田理乃
ずっと前からそうだけどさ、
......幸輝くんのこと、信じてるよ








―――――









その翌朝。


通学途中に、義姉さんは今晩、父さんに呼ばれていることを教えてくれた。
澤田理乃
澤田理乃
分かんないけど、多分。
あの目はそうだよ
おびえた様子で、でもそれをかくしながら、そう言っていた。




同時に、俺は嫌な予感を抱いたりしていた。


全然考えていなかったけど、もうすぐで、7日間が終わる。
そして過去では、今日を境に義姉さんは変わっていった。


この数日間、父さん達のすきをうかがったり色々したつもりだ。




そしてその中で、一つ大きなことも分かっている。



......本当に、信じたくもないけど。
でも、信じていいなら信じたいこと。








父さんの部屋の前で、静かに深呼吸をする。
義姉さんの笑顔を思い浮かべて、もう一度、心を決める。


──ドアをノックした。

プリ小説オーディオドラマ