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衝動的に義姉さんを抱きしめたまま、空っぽの頭に浮かんできた言葉を吐いた。
一瞬、びくりと義姉さんの体が揺れる。
「それに」......なんだ?
俺は何が言いたい?
そんなことを考えて、言葉に詰まる。
「義姉さんに伝えたいのは?」
......しっかり義姉さんの表情が見えるようにしてから、
ちょっと照れくさい、そんなことを言った。
義姉さんはしばらく、びっくりしたような顔をして、俺を見ていた。
けどすぐに、それは俺のほしかったものに変わっていく。
少し呆れたような、でもなにか嬉しそうな、そんな、表情。
いたずらっぽい顔でそんなことを言って、浅い深呼吸をして、
今度はちょっと潤んだ目で。
......こんな風に表情がコロコロ変わるのを見るのも、なんだか懐かしい。
気が抜けて、俺も笑っていたことに気づく。
その顔は、やっぱり俺を安心させてくれて。
次の言葉は、俺にもう一度、決意させた。
―――――
その翌朝。
通学途中に、義姉さんは今晩、父さんに呼ばれていることを教えてくれた。
怯えた様子で、でもそれを隠しながら、そう言っていた。
同時に、俺は嫌な予感を抱いたりしていた。
全然考えていなかったけど、もうすぐで、7日間が終わる。
そして過去では、今日を境に義姉さんは変わっていった。
この数日間、父さん達の隙をうかがったり色々したつもりだ。
そしてその中で、一つ大きなことも分かっている。
......本当に、信じたくもないけど。
でも、信じていいなら信じたいこと。
父さんの部屋の前で、静かに深呼吸をする。
義姉さんの笑顔を思い浮かべて、もう一度、心を決める。
──ドアをノックした。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!