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父さんのしていたこと。
それは
世間が、虐待 と言ってるあれだ。
俺はすぐに周りのヤツらに話した。
「もしかしたら俺の義姉は虐待を受けてるかもしれない」と。
勘違いでしょう?
随分勝手なことを言うな、証拠はどこにある?
何度そう言われたことか。
......ちなみに、それを言ったヤツの中には、義母さんと父さんも含まれてる。
そう、義姉さんの実の両親が言ってたんだ。
ああ、......サイテーな奴らってこうも身近にいるもんなんだな。
不思議と、自分でも驚くほど冷静にそんなことを思えてしまうほどだった。
──具体的に何をされてたかって言うのは、さすがに言いたくない。
一度問い詰めてみたら、
って。
そんなふうに返された。
その時、心配をかけさせないためだろうけど、義姉さんは笑顔を見せた。
もちろん、心から笑ってるって感じではなかった。
けど、......だから、俺は逆に笑えなかった。
どう返せばいいのか分からなくて、義姉さんの顔を見つめたままの俺に、いつかのように彼女は言った。
また笑う。はにかんだように、優しく。
そして、俺の髪をわしゃっとちょっと強引に撫でた。
それに対して俺は、ただうつむくことしかできなかったんだけど、義姉さんは
そう言って、部屋を出ていったんだ──。
―――――
......なんで、だったんだろう。
自問したことなんてなかった。
あの時に何かできていれば良かったのか?
と、ただただ後悔するばかりだったんだ。その時の俺は。
ほぼ無理やりだが、口を開いてみる。
そこまで吐き出して、何もでてこなくなった。
............言葉が、上手く見つからない。
想乃は、優しくうなづいてくれる。
その動きが、なんだか俺を安心させてくれた。
今の今まで、ずっと。
何度もあの日のことを思い返しては、後悔して、.....また自分が嫌になって。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。