最終話
ついに、最後の日。
義姉さんの笑顔も見れて、父さんはすっかり大人しくなったというかなんと言うか......。
結局会ってないんだけど。
自分なりに尽くしたつもり......。
──......なんだけど。
俺は思いっきり持病に倒れていた。
なかったんだよ......。
最後の日まで義姉さんと話したりしたかったんだけどなあ............。
なんだそれ......。
............まあ、いいか。
意味ありげな顔で、想乃は言う。
思ってもみない質問だった。
でも答えは決まってる。
もちろん、
心底嬉しそうに、想乃は笑った。
その笑みは、なんとなく義姉さんに似ているような......そんな気がした。
その直後、身体中を痛みが走る。
......発作。
生まれつきのこの病気は、最近は、ほとんど出ていなかった。
難しいことは、よく知らない。
けど、今回は、いつもより酷いような、そんな気が、する。
バタバタと走る音がして、その後に義姉さんの顔で、視界がいっぱいになる。
俺の名前を呼ぶ義姉さんは、なにか手に持っていた。
ああ、これ、薬か......。
そう思ったのも束の間、俺は意識を失った。
―――――
夢のようなものの中で、義姉さんは微笑んでいた。
ぼんやりとした視界でも、声だけははっきりしていて、なんだか不思議だった。
ゆっくり語りかけるように、言葉を紡がれる。
―――――
──あの後の言葉は、今でもはっきりと覚えている。
もう暗くなりかけた頃。
俺は1人で、あの日と同じように、花々の横をすり抜けていく。
そうしてカウンターの裏まで進み、こんにちは、と声をかけた。
............?
あー......、そう言えばそうだったなあ......。
というか、覚えてくださったのか。
彼女に別れを告げたその日。
俺はまた、Ropenterに来ていた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!