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第25話

秋の友達
30
2020/05/06 04:00
最終話









ついに、最後の日。


義姉ねえさんの笑顔も見れて、父さんはすっかり大人しくなったというかなんと言うか......。
結局会ってないんだけど。

自分なりに尽くしたつもり......。





──......なんだけど。
澤田理乃
澤田理乃
幸輝くん、......大丈夫?
澤田幸輝
澤田幸輝
だいじょうぶ......
ごめんね、義姉さん......
俺は思いっきり持病に倒れていた。






山本想乃
山本想乃
......どんまいだね
澤田幸輝
澤田幸輝
いやぁ......うん。こんなはずは......


なかったんだよ......。




最後の日まで義姉さんと話したりしたかったんだけどなあ............。
澤田幸輝
澤田幸輝
............ところで、さ
山本想乃
山本想乃
うん?なあに
澤田幸輝
澤田幸輝
なんで当たり前のように居るんだ?
山本想乃
山本想乃
今更?
えーとねえ、最後だし、良いかなって
なんだそれ......。
山本想乃
山本想乃
それに......キミや、キミのお義姉さんがどうなったかなって
澤田幸輝
澤田幸輝
......


............まあ、いいか。
澤田幸輝
澤田幸輝
うまくいったよ。
義姉さんはまた笑ってくれるようになったし、俺自身、結構納得いってる結果というか
山本想乃
山本想乃
ほぉー、なるほどねえ......
それなら、良かった
意味ありげな顔で、想乃は言う。
山本想乃
山本想乃
じゃあ、後悔はしてない?
澤田幸輝
澤田幸輝
......!
思ってもみない質問だった。

でも答えは決まってる。
もちろん、
澤田幸輝
澤田幸輝
ない
山本想乃
山本想乃
良かった
心底嬉しそうに、想乃は笑った。


その笑みは、なんとなく義姉さんに似ているような......そんな気がした。








その直後、身体中を痛みが走る。
澤田幸輝
澤田幸輝
......ぅっ......っ......


......発作。



生まれつきのこの病気は、最近は、ほとんど出ていなかった。

難しいことは、よく知らない。

けど、今回は、いつもより酷いような、そんな気が、する。
澤田幸輝
澤田幸輝
......ぁ......っ
バタバタと走る音がして、その後に義姉さんの顔で、視界がいっぱいになる。
澤田理乃
澤田理乃
幸輝くん!
俺の名前を呼ぶ義姉さんは、なにか手に持っていた。


ああ、これ、薬か......。



そう思ったのも束の間、俺は意識を失った。











―――――










夢のようなものの中で、義姉さんは微笑んでいた。



澤田理乃
澤田理乃
......幸輝くん
ぼんやりとした視界でも、声だけははっきりしていて、なんだか不思議だった。
澤田理乃
澤田理乃
幸輝くんが考えてくれたこと、してくれたこと、全部、嬉しかったよ
ゆっくり語りかけるように、言葉をつむがれる。
澤田理乃
澤田理乃
私は幸輝くんに、いっぱい色んなことをもらった。
見えるものも、見えないものも、いーっぱい
澤田理乃
澤田理乃
だから、ね。
私は本当に幸せだよ
澤田理乃
澤田理乃
ふふ......っ。
私達ほど仲の良い姉弟きょうだいなんて、そこらじゅう探してもいないって、ほんとに思ってる
澤田理乃
澤田理乃
それで、ね......──







―――――






──あの後の言葉は、今でもはっきりと覚えている。




もう暗くなりかけた頃。
俺は1人で、あの日と同じように、花々の横をすり抜けていく。


そうしてカウンターの裏まで進み、こんにちは、と声をかけた。
麗華
いらっしゃいませ
麗華
......って、あれ?
君、もしかして一度このお店......って、あ!
お義姉ちゃんの子!
............?
麗華
何年前だっけ、でも結構最近だよね......。
あの後倒れたってきいて、心配してたんですよ


あー......、そう言えばそうだったなあ......。


というか、覚えてくださったのか。
澤田幸輝
澤田幸輝
もう大丈夫ですよ、お久しぶりです
麗華
こちらこそ、お久しぶりです。
元気そうで良かった〜。

......あ、それで、ご要件は?
澤田幸輝
澤田幸輝
ああ、はい。実は......──
彼女に別れを告げたその日。

俺はまた、Ropenterロペンターに来ていた。

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