家に帰って塾のカバンを片付け始める。
そう言って、私は母に県統一テストを見せた。
私は、母のこういうところは結構好きだ。
私だって、次も頑張りたい。母の期待を裏切りたくないっていうのもあるけど、上がった成績を下げたくない。
さっきまでお風呂に入っていた父が、お風呂から出てきた。
母がこんなに私を褒めてくれたことはあっただろうか。母もとても喜んでいる。
二人が喜んでくれて良かった。頑張って良かった。そう思った。
翌日、学校に行くと、いつものように、美空ちゃんが待っていた。
美空ちゃんではなく、他の女子が言った。
ハハハ、とみんなで笑う。こういう平和な感じ、いいな~。
そんなことを思っていると・・・
ガラッ。
教室に生徒が入って来た。
クラスの男子の声を聞いて、戸の方を見ると・・・
高宮くんがいた。
美空ちゃんも気がついたようだ。
あれ・・・?一昨日、意味不明なことを言っていたのに、今日は極めて普通だ。やっぱり大した意味はなかったのかな・・・?
時間になり、私達は席についた。
本当にそうなのだろうか。私には、違う気がした。
少し言い方がきつくなってしまった。でも、このことはちゃんと聞かないといけない気がした。
この後高宮くんが言うことが、まさか絶句するほど悲しいことだと、私はこの時知らなかった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!