翌朝。いつもより少しゆっくり起きて、制服に着替える。体が少しだるい。昨日はあまり眠れなかった。原因は、昨日の夜、両親から話された、衝撃的な事実だ。
ふぁ~、とあくびをしながら、1階のリビングへと向かう。廊下に、トントントン、という、食材を切る音が聞こえてくる。
ガチャッ。
リビングのドアを開けて、挨拶をする。
母は、かろうじて普通に見えるが、若干顔が強ばっている。
だから、今日から帰って来るのが少し遅くなるから、昨日話をしたのだろう。
朝食を食べて、家を出る。
よし。今から普通にしないと。
学校に着くと、いつものように美空ちゃんが待っていた。
少し苦しい嘘だけど、なんとか乗り切った。
昨日の帰り、高宮くんは、「今日の分でなんとかするから、明日は大丈夫」って言っていた。だから、今日は大丈夫だ。
そんな風に思っていてくれたのが、とても嬉しかった。やっぱり信頼されているっていうのは、心強い。
確かに今日も、いつもより遅い。お母さんに何かあったのだろうか。
そういうことか。
そっか~、美空ちゃん、麻生くんのこと好きだったんだ。私も、好きな人とか出来るかな・・・。って、転校する時に、『もう恋なんてしない』って決めたじゃん!とにかく今は、美空ちゃんと麻生くんを応援しよう!
キーンコーンカーンコーン。
学校内にチャイムが鳴り響いた。本当、休み時間ってあっという間だな~。
ガラッ。
先生が入って来た。
ホームルームが始まったので、私はこっそりスマホを開いた。そうしたら、一件の通知が来ていた。高宮くんからだった。
一応授業中なので、早く切り上げた。
ほどなくして、授業終了のチャイムが鳴った。私はラインを再開した。
・・・私の本当の親だし。
高宮くんとのラインを終え、まだ少し時間があることを確認し、お母さんにメッセージを送った。
スマホを閉じると、美空ちゃんが話しかけて来た。
高宮くんのお母さんの病気のことは言えないので、そう言っておいた。
二人で話していたら、麻生くんが来た。
何の話だろう。考えていたら、美空ちゃんが見詰めていた。
・・・多分、高宮くんの話だろう。何か知っているかを聞かれると思った。
その後に発せられた言葉は、予想していた内容とは別物だった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。