第11話

いろんな事実
152
2018/06/07 01:00
翌朝。いつもより少しゆっくり起きて、制服に着替える。体が少しだるい。昨日はあまり眠れなかった。原因は、昨日の夜、両親から話された、衝撃的な事実だ。
 ふぁ~、とあくびをしながら、1階のリビングへと向かう。廊下に、トントントン、という、食材を切る音が聞こえてくる。
 ガチャッ。
 リビングのドアを開けて、挨拶をする。
梨乃花
おはよー
梨乃花、おはよう
母は、かろうじて普通に見えるが、若干顔が強ばっている。
梨乃花
お父さんは?
今日から少し遠くに行くんだって。大変ねー。
梨乃花
そうなんだ
だから、今日から帰って来るのが少し遅くなるから、昨日話をしたのだろう。

朝食を食べて、家を出る。
よし。今から普通にしないと。

学校に着くと、いつものように美空ちゃんが待っていた。
栗原美空
梨乃花ちゃんおはよう!
梨乃花
美空ちゃんおはよう
栗原美空
昨日の用事何だった?
梨乃花
あ、あー、親戚の家に寄って来ただけだよ
少し苦しい嘘だけど、なんとか乗り切った。
栗原美空
そうだったんだ~!
今日は一緒に帰れる?
梨乃花
うん。大丈夫だよ~
昨日の帰り、高宮くんは、「今日の分でなんとかするから、明日は大丈夫」って言っていた。だから、今日は大丈夫だ。
栗原美空
良かった~!やっぱり梨乃花ちゃんいないと寂しいもんね~!
梨乃花
そう?
栗原美空
そうだよ~!一番仲良い子がいないと、結構寂しいもんだよ~!
梨乃花
そっか~、ごめんね!
栗原美空
いいよ全然、今日一緒に帰れるし!
そんな風に思っていてくれたのが、とても嬉しかった。やっぱり信頼されているっていうのは、心強い。
栗原美空
てか、今日も高宮来ないね~!遅刻だといいけど~
梨乃花
そうだね~
確かに今日も、いつもより遅い。お母さんに何かあったのだろうか。
栗原美空
ねーねー、そういえばさ、梨乃花ちゃんって麻生くんと同じ塾なんだよね?
梨乃花
え?どうして知ってるの?
栗原美空
いやー、この前さ~、西島さんと会ったって言ったじゃん。その時に連絡先交換して、今ラインとかで繋がってるんだよね~!
そういうことか。
栗原美空
でさ、本題なんだけど、私、麻生くんのこと好きなんだよね
梨乃花
え、そうなの?
栗原美空
うん!それでさ~、協力して欲しいんだけど、いいかな?
梨乃花
もちろん!二人お似合いだと思うし、応援するよ~
栗原美空
本当?ありがとう!梨乃花ちゃんに話して良かった~♪
そっか~、美空ちゃん、麻生くんのこと好きだったんだ。私も、好きな人とか出来るかな・・・。って、転校する時に、『もう恋なんてしない』って決めたじゃん!とにかく今は、美空ちゃんと麻生くんを応援しよう!
栗原美空
それでさ~、麻生くんって好きな人いるらしいんだよね~!誰かな?
梨乃花
そうなの?
栗原美空
うん、なんか高宮が言ってたよ~。「俺、塁に告白したのに、『好きな人がいるから』って断られた~!(泣)」って!
梨乃花
何それ~!(笑)
栗原美空
ね、バカだよね(笑)
キーンコーンカーンコーン。
学校内にチャイムが鳴り響いた。本当、休み時間ってあっという間だな~。

ガラッ。
先生が入って来た。
先生
みなさんおはようございます。今日は、高宮くんは欠席です。
クラスの男子
え、まじで⁉バカは風邪引かないっていうのに⁉
クラスの女子
さりげなくバカにすんなよ(笑)
先生
高宮くん自身の体調不良じゃないですよ。さて、高宮くんの話はここまで。ホームルームを始めます。
ホームルームが始まったので、私はこっそりスマホを開いた。そうしたら、一件の通知が来ていた。高宮くんからだった。
高宮佑樹
ヤバい、母さんの病状が悪化したらしい。どうしよう!
梨乃花
今どこにいるの?
高宮佑樹
母さんが入院してる病院。妹は学校に行かせた。テスト三昧らしいから。
梨乃花
そっか。ごめん今ホームルーム中だから、休み時間になったら詳しく教えて。またラインするね。
一応授業中なので、早く切り上げた。

ほどなくして、授業終了のチャイムが鳴った。私はラインを再開した。
梨乃花
授業終わったよ。
高宮佑樹
了解。あのさ、母さんさ、もしかしたら手術しないといけなくなるかも
梨乃花
そうなの⁉今どういう状況?
高宮佑樹
なんか、この前までは、薬で炎症が治まってたらしいんだけど、昨日の夜、佐々木さんが帰ってから、病院に行ったら、症状が悪化してて、薬で治まらないほどひどい状態になったらしいんだ
梨乃花
私、行った方がいい?
高宮佑樹
いや、これ以上迷惑かけるわけにはいかないよ
梨乃花
でも、多分大人一人くらいついてた方が良いと思うから、私のお母さんにお願いしようか?
高宮佑樹
お願いしていい?
梨乃花
もちろん!
高宮佑樹
良かった~、ありがとうな
梨乃花
ううん、少しでも力になれるなら、何でもするから
・・・私の本当の親だし。
高宮佑樹
まじで助かる。てか、そろそろ授業始まるよな?続きはまた後で。
梨乃花
うん、後でね
高宮くんとのラインを終え、まだ少し時間があることを確認し、お母さんにメッセージを送った。
梨乃花
お母さん、高宮くんのお母さんが病状が悪化したらしいの
うん、私も昨日の夜電話がかかって来て知ってる。
梨乃花
今日の夜、病院に見舞いに行ってくれない?
うん。そのつもりでいるわよ。佑樹くんに頼まれたの?
梨乃花
うん。ありがとう。高宮くんに言っておくね。
うん。
栗原美空
ね~、梨乃花ちゃん!高宮どうして休みなのかな?
スマホを閉じると、美空ちゃんが話しかけて来た。
梨乃花
う~ん、用事じゃない?
高宮くんのお母さんの病気のことは言えないので、そう言っておいた。
栗原美空
だよね~、やっぱりバカは風邪引かないもんね~!
梨乃花
それ言っちゃダメじゃん(笑)
栗原美空
ははは、高宮ごめ~ん(笑)
梨乃花
ははは
麻生塁
佐々木さん、今いい?
二人で話していたら、麻生くんが来た。
梨乃花
え、いいけど・・・
麻生塁
ちょっと話したいことがあって
梨乃花
う、うん
何の話だろう。考えていたら、美空ちゃんが見詰めていた。
栗原美空
何の話かな~?
梨乃花
もしかしたら、美空ちゃんが好きだから、協力して欲しいとかじゃない?
栗原美空
え、うそ~!それはないって~!
梨乃花
いやいや分からないじゃん!行って来るね~!
・・・多分、高宮くんの話だろう。何か知っているかを聞かれると思った。
麻生塁
ごめん、会話中に。
梨乃花
いいよ全然。話って?
麻生塁
僕さ・・・
その後に発せられた言葉は、予想していた内容とは別物だった。

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