前の話
一覧へ
次の話

第1話

転校
303
2018/06/06 03:37
 高校生になって5か月、やっとこのクラスに馴染んで来た頃の夏休み、どうしてこんな時期に親の都合で転校なんてしないといけないのだろう。原因は、親の転勤。あのド田舎から解放されたのはいいけど、せっかく作った友達ともすぐにお別れ。親はめちゃくちゃ謝ってきたけど、それでも足りない。転校なんてなければ、あんなことは起きるはずなかったんだから。
 転校直前に、中学校の頃から付き合っていた彼氏にこのことを話した。そうしたら、「まあ転校なら仕方ないよ。向こうでも頑張れよ」という言葉とは裏腹に、こっぴどく私を振ったのだ。あいつは、「じゃあな。もう会うこともないと思うけど」と捨て台詞を残して、私の前から去っていった。その時の私は、ただ何も言い返さずに、呆然としていた。怒りが込み上げてきたのは、ふらふらと家に帰った後のことだった。
 私は、転校する時に、決めたことがある。
 「もう恋なんてしない。」
 私は、新しい制服を身に包みながら、そう決意した。
 

プリ小説オーディオドラマ