バタンッ。病院から、家に帰って来た。もう朝の5時だ。夏樹はちゃんと夕食を食べたのかな。
昨日、病院で一日母さんを見守った。起きている間は、いつも穏やかな表情をしていた。これでも病気かっていうくらい、優しい顔だった。しかし、寝ている時は、穏やかな表情の時もあったが、「ううぅーー」と呻いて、苦しい表情をしていたり、涙を溢す時も多々あった。
夜は、佐々木さんのお母さんが来てくれたおかげか、安らかに眠りに落ちた。
夏樹が消し忘れたのかな。そんなことを考えながら、リビングに入って行くと、
ソファーに、夏樹と佐々木さんが、二人、寝そべっていた。
そう呟いたその時、
佐々木さんが目を覚ました。
そう声をかけた瞬間・・・
勢いよく二人揃って床に倒れかかった。
・・・ん?なんか体の上に、柔らかいものが・・・
目を開くと、俺の上に佐々木さんが乗っかっていた。多分、下敷きになったんだろう。
よく見ると、目の前に佐々木さんの顔があった。大きな目、少し小さめな鼻、細い眉、緩やかな唇、黒いストレートの髪、全てが今まで見たことないくらい近い距離にあった。
・・・佐々木さん、こんなに綺麗な顔してたんだ。そう思うと、恥ずかしくなった。
ほんのり赤くなった彼女の頬を見て、余計に恥ずかしくなった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。