第9話

ご飯
156
2018/06/06 16:46
やっとの思いで高宮くんの家に着いた時には、もう日が暮れていた。
高宮佑樹
ちょっと遅くなったなー。佐々木さん時間大丈夫?
梨乃花
うん。『遅くなる』って言ってあるから
高宮佑樹
そっか~、良かった~
梨乃花
冷蔵庫の中見てもいい?
高宮佑樹
うん
冷蔵庫の中を見ると、野菜、肉、豆腐、チーズ、魚などが、バラバラに入れてあった。ついでに、冷蔵庫の下の冷凍庫を見ると、冷凍食品で敷き詰められていた。
梨乃花
ちょっと整理していい?
高宮佑樹
いいよ、てか、してくれるとありがたいわ。俺一人だと、片付けとかする気になれなくてさ
梨乃花
そっか~
冷蔵庫の中を一通り片付けしてから、材料を取り出し始めた。
梨乃花
妹さん、苦手な食べ物ある?高宮くんもだけど
高宮佑樹
う~ん、ニンジンとチーズが苦手だったかなー。俺は白菜が無理。
なるほど。八宝菜とかピザとかが無理なのかな。
梨乃花
ありがとう。いつもどんなもの作ってる?
高宮佑樹
いつもは、冷凍食品と、あと炒め物が多いかなー。
梨乃花
う~ん、それじゃあちょっと栄養バランス悪いかもね~
高宮佑樹
やっぱりかー
梨乃花
よし。今から作るね。
高宮佑樹
了解。俺何か手伝うことある?
梨乃花
う~ん、じゃあ材料出して、切って貰おうかな
高宮佑樹
了解。任せろ。


作りはじめて40分。
梨乃花
・・・ふぅ、出来た
高宮佑樹
まじで⁉
梨乃花
そういえば、妹さんは?
高宮佑樹
多分部屋で宿題してる。
・・・うわ、めちゃくちゃ美味そう!
梨乃花
そう?良かった~
高宮佑樹
佐々木さんも食べてく?
梨乃花
私はいいよ。高宮くんの家の食材だし。
高宮佑樹
いいっていいって、腹減ってるだろ?
梨乃花
え、じゃあちょっとだけ
高宮佑樹
そうそう、どうぞ~
ドタドタドタドタ。
ガチャッ。
リビングのドアが開いた。
高宮夏樹
お兄ちゃん、ご飯まだ?
私と、妹さんの目が合った。
高宮佑樹
おー夏樹、ちょうど出来た所だぞー。
高宮夏樹
え、お兄ちゃん、この人誰?
高宮佑樹
あー、このおねーさんは俺の友達で、ご飯作りに来てくれたんだよ
え、高宮くんもしかして、妹さんに言ってなかったの?
高宮夏樹
もしかして、お兄ちゃんの彼女?
高宮佑樹
違う違う、友達だって!
そんなに慌てて否定して、どうしたのだろう。
高宮佑樹
佐々木さん紹介するな。こいつは俺の妹の夏樹。
梨乃花
夏樹ちゃん、よろしくね。私はお兄ちゃんのお友達の梨乃花だよ。
高宮夏樹
梨乃花、ちゃん?
梨乃花
うん
高宮夏樹
料理上手いの?
高宮佑樹
めちゃくちゃ上手だぞー!
高宮夏樹
やったーー!お兄ちゃんの作るご飯いつも味濃くて塩分多いんだもん!
梨乃花
そ、そうなんだ~
高宮佑樹
ちょ、夏樹ひどくない⁉そんなに味濃い?
高宮夏樹
めちゃくちゃ濃い!ねぇ梨乃花ちゃん。これ食べていいの?
梨乃花
うん、どうぞ~
パクッ。
夏樹ちゃんが食べた。
高宮佑樹
あ、俺もまだ食べてないのに!
高宮夏樹
ふふん、いいでしょ~♪梨乃花ちゃん、これめちゃくちゃ美味しい!
梨乃花
そう?ありがとう!
高宮夏樹
また作りに来てね!
梨乃花
うん!
夏樹ちゃんは、その後高宮くんの分を半分も残さず食べてしまった。高宮くんと少し似た、大きな目がキラキラと輝いている所を見ると、可愛くていたたまれなかった。

 夕食を食べた後、もう暗いので、高宮くんに家の近くまで送ってもらうことになった。
高宮佑樹
今日はありがとうな
梨乃花
いいよ、夏樹ちゃんも喜んでくれたし。また明日も行くね。
高宮佑樹
本当にありがとう
腕を掴まれた。
高宮佑樹
俺、本当に佐々木さんに言って良かったって思う。ここまで力になってくれると思ってなかったんだ。最初は聞いてもらうだけで十分だった。でも、『出来ることない?』って言われた時、ここで頼らなかったら、一生誰にも頼れないんじゃないかって思って。そしたら、ここまでしてくれて。本当に感謝してる。
まさか、私がそんなに感謝されていたとは知らなかった。
梨乃花
うん。私も、ご飯のこと頼ってくれて嬉しかったよ。本当に、信頼してくれてるんだって感じて、嬉しかった。それに、『美味しい』って言ってくれた、高宮くんと夏樹ちゃんを見て、頑張って良かったって思う。やっぱり喜んでくれる人がいると頑張って良かったって思うし、これからも頑張ろうって思える。私だって、信頼されてるって確信がなかったら、自信なくなるもん。本当に感謝してるんだよ。
暗くなった、7時頃の道路は、思っていたより静かで、会話を際立たせる。
ふ・・・。高宮くんが微笑んだ。
高宮佑樹
お礼したら、お礼で返された
梨乃花
ははは、そうだね。
その後、少しの間沈黙が訪れた。
高宮佑樹
家、ここだよね
いつの間にか、家の前まで来ていた。
梨乃花
うん。送ってくれてありがとう。
高宮佑樹
うん、おやすみ
梨乃花
おやすみ
バタンッ。
ドアの戸を閉めた瞬間、家の中の温もりが入って来た。

今日は、いい日だったな。
とっくの前に閉めたドアを見つめながら、そう思った。

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