そう言って染谷さんはこちらに手を伸ばしてくると、
私の頭をぽんぽんと撫でた。
それにときめいてしまった私は、
窓の方を向いて景色を見ているふりをしたのだった。
***
車で高級なブティックに連れていかれた私は、
上質なシルクのワンピースに着替えさせられた。
そして、やってきたのは……。
夜景が見えるレストランだった。
染谷さんとディナーを頂きながら、
私は曖昧に笑みを返す。
(でも、私にはホテルの高級ディナーなんて、
敷居が高すぎて……。
正直、味がわからない!)
(それに服も買ってもらっちゃって、
なんだか申し訳ないし……)
とはいえ、素直にそう言うわけにもいかず、
当たり障りのない答えを返したのだが……。
(染谷さん、私の嘘に気づいてる?)
気まずくなった私は、
諦めて首を縦に振った。
そう言って、染谷さんは席を立つ。
(もしかして怒らせた?
ど、どうしよう!)
あわあわしていると、
染谷さんが椅子を引いてくれる。
染谷さんはそう言って、
立ち上がった私の手を引いた。
***
なにがなんだかわからず、
染谷さんに連れてこられたのは、
居酒屋。
口をぽかんと開けながら呟くと、
染谷さんは小さく吹き出す。
染谷さんの合図で、
私たちはさっき頼んだお酒のグラスをぶつける。
染谷さんは机に頬杖をついて、
眩しそうに私を眺める。
私は勢いよく頭を下げる。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。