乞うように見つめてくる染谷さんに、
私はこくりと頷く。
染谷さんは我慢できないといった様子で、
私を強くぎゅうっと抱きしめた。
染谷さんは私の髪を何度も撫でた。
頬と頬をこすり合わせて、
全身で大好きだと伝えてくる。
私は同じ気持ちだと伝えるように、
染谷さんの首に腕を回した。
染谷さんは切なげにそう囁いて、
耳たぶにキスをしてくる。
私たちはそのまま、
夜ご飯を食べるのも忘れて、
身を寄せ合っていた。
***
次の日。
──ピーンポーン。
インターフォンの音が聞こえて、
私は染谷さんのベッドで目を覚ます。
隣には、すやすやと規則正しい寝息を
立てている染谷さん。
(寝てる染谷さんって、なんか子供みたい)
あどけなくて、
聞いていた年齢よりもうんと若く見えた。
染谷さんを起こさないようにベッドを出ると、
私はインターフォンの画面を確認する。
そこにいたのは白金さんだった。
(知ってる人だし、出てもいいかな?)
私は通話ボタンを押す。
(暇つぶし?)
不穏な単語が聞こえたような気がしたけれど、
染谷さんの取引相手なら無視できない。
私はマンションの玄関の
オートロックを解除した。
急いで私服に着替えると、
再びインターフォンが鳴る。
玄関のドアを開ければ、
いきなり白金さんに手首を掴まれた。
白金さんは有無を言わさず
靴も履いていない私を肩に担ぐと、
どこかへ歩き出した。
***
──太陽が高い位置に昇った頃……。
(どうして、こんなことに……)
白金さんに攫われてやってきたのは、
白金財閥主催のパーティー。
私は白金さん好みのネイビーのドレスに
着替えさせられたあと、
同伴者としてそばにいるよう命じられた。
白金さんは即答した。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!