丸くんと初めて会ったのは、
彼の入学式の日だ。
懐かしく思いながら、
私は顔を綻ばせる。
つい、ふふっと笑うと丸くんは
私の顔をじっと見つめて目を細める。
丸くんは照れくさそうに後頭部に
手を当てた。
話しているうちに出口に着いた。
校舎を出た私たちは、校門に向かって歩き出す。
気まずそうにうめく丸くんに、
私はくすっと笑ってしまう。
校門に到着すると、
私たちは向き合うように立つ。
丸くんの顔は心なしか赤い。
(丸くん……?)
私は心配になって、
丸くんの額に手を当てる。
すると、丸くんは声にならない悲鳴をあげて、
後ろに飛び退いた。
そう言いかけたとき、
目の前に真っ黒なベンツが止まる。
車から降りてきたのは、
びしっとしたスーツに身を包んだ染谷さんだった。
周囲にいた生徒たちがざわつき始める。
学生たちの視線を集めながらも、
染谷さんはさほど気にした様子も
なく私の前にやってくる。
(嬉しい。だけど……)
素直にそう伝えるのが恥ずかしかった私は、俯く。
勢いよく顔を上げて首を横に振れば、
染谷さんは目を見張る。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。