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第30話

素直と再開。-影山飛雄-
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2021/03/01 03:47
『うるせーよ、』

『そんなんじゃねぇし』

『お前には関係ない。』

俺は昔っからそうだ。

ハッキリ言いすぎたり、言い方がキツかったり。


だからあんなことに…。



1年前の今日、俺は捨てられた。


正確に言えば俺のせい。


俺のせいであいつは俺の事を捨てた。


それであいつが幸せになれるなら、もうそれでいい。


でも諦めきれなかった。

心のどこかで、また君に会えるんじゃないかって思ってた。



あいつと最後に話したとき、こんなことを言っていた。

「もっと素直になりなよ」

その時の俺はまだ素直なんて言葉も、どう実行すればいいのかも知らなかった。


高校1年生になってからようやくわかった。

日向が教えてくれた。

日向「素直?お前、何そんな真剣に悩んでんだよ」

菅原「影山が、あの影山が日向に相談…」

澤村「あいつも悩むことあるんだな」

月島「だから最近王様のトス打ちにくかったんだ〜」

『ア゙ァッ?』

日向「簡単じゃねぇか、隠し事なしねってことだよ」

『お、そうか』

この一言で俺は何故か腑に落ちた。


ーーーーー
全国高校バレーボール大会、通称春高。

宮城県予選

決勝
VS白鳥沢

初めての5セットマッチ。

あの県最強の牛若を倒し、俺たち烏野は全国の舞台へ。

日向「トーキョー!体育館!!!」

菅原「ついにここまで来たか〜!!!」

東峰「ウゥ、無理緊張する…」

西谷「りゅう!トーキョーだぞ!トーキョー!!」

『…東京の体育館…。』

『おい日向、先行ってろ、、』

日向「あ?なんだ、影山も緊張してんのか?」

『そ、そんなんじゃねぇよ、いいから早く行けって!』

月島「広いから迷子にならないようにね〜」

『チッ、わかってるよ、』



東京の体育館、あなたはここに来てるのかな。


あいつ、毎年春高バレー楽しみにしてたもんな。








「…の、、あの!すみません!」

『…はい?』

突然誰かに話しかけられ、顔を上げるとそこには















『…あなた』

「あ!やっぱり影ちゃんだ!」

『え、あ、どうしてこんなところに?』

「さがしてたんだ、あの時からずっと」

『え、でも…』


あなたは俺の事を捨てた。

なのになんで。


なんで捨てた人の事を探す?


「影ちゃんがみたくってさ、烏野が代表に進んだって聞いたからつい…」

『だ、誰から?』

「烏野高校排球部のジャージ着た高身長メガネくんに話しかけたら教えてくれた。」

『(あいつ…サラッと…)』

『で、俺になんの用があってきたんだよ』

「ずっと、謝りたかった」


『…え?』

思いがけない一言を聞いた。



ーーーーー


「影ちゃん!今日ね?テストで100点とったんだよ!」

『あっそ、』


「影ちゃん!今日もトスバッチリだったね!」

『おう』

「影ちゃん!大好きだよ!」

『うん、』



恋愛なんて何すればいいかわからねぇ。

あなたが初恋だったから、なんも知らなかった。


そもそも俺はあんま人に大好きとかいうタイプじゃないし、カップルらしいこと何もしてやれなかった。





「影ちゃん…」

1年前の今日、あなたは異様にテンションが低かった。


『ん?なに?』

「別れよっか…」

1番聞きたくない言葉だった。


『…は、?』

俺の返事も聞かず、はそのまま走り去ってしまった。


次の日からあいつは学校に来なくなった。


『先生、あなたはなんで、なんで学校に来ないんですか…』

先生「あなたちゃんね、引越しするんだって」

『…え、、、』


ショックだった。

俺のせいなんじゃないかって思った。

後悔で頭が爆発しそうだった。


バレー以外の事で絶望なんて今までしたこと無かったのに。


それから俺はずっと独りだった。


心の中でどれだけあいつのことを考えても、絶対会えるはずがない。

だってあなたの引越し先は…





先生「東京に引っ越すらしいぞ」

『東京…』

ーーーーー


あの時のことは鮮明に覚えている。

嬉しい、凄く嬉しい。

またあなたに会えて。

『謝りたかったって…、あなたは何も悪いことしてないだろ、』

「ううん、たくさんある。」

『え…?』


「今でも、あの時だって、私は影ちゃんのことが大好きだった。」

「でもずっと黙ってた…」




















「東京に引っ越すこと。」











『…?』


「影ちゃんと離れるのが怖かったの。ずっと一緒に居たかった。…でも、引越しは避けられなかった。」


あいつは俺を捨てたんじゃなかった。


俺のことを考えて、あの時急に別れを告げた。


『あなた、俺はあの時からもずっとお前のことを想ってた。だから、だから、、』











遠距離だっていい。



『俺と、もう一度付き合ってください。』


「…はいっ!」


俺は気づいたら泣いていた。

東京で、今から試合だってのに。

『烏野の試合、もちろん見るよな?』

「応援するに決まってるでしょ?私は宮城の人なんだから!!」
















これはバレーボールが起こしてくれた、たった一つの小さな奇跡。

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