第14話

これは甘えのはずだった-灰羽リエーフ-
1,305
2020/12/26 15:40
あなたside

私の気持ちも知らないで。


私がどれだけリエーフのことを愛しているか


なーんて、リエーフは考えもしてないのかも。


本当は、大好きで大好きで仕方が無いのに、


今にも抱きしめたかったのに、



”嫌い”

その一言を残して出て来てしまった。

これでいいんだ。










ーーーーーー

あれから約1週間経ったある日。


リエーフの職場の人から私に1件の電話があった。


『はい、もしもし、名取です。』

(あ、あの!リエーフの彼女さんですよね…?いつもお話聞かせてもらってます!)


相手の男性はとても焦っていた。

違いますとも言えないから、とりあえず話を聞くことにした。


「え、えぇ、そうですが、どうかしました?かなり焦っているようですが」

(それが、リエーフが職場に来ないんです。)

「それをなぜ私に?」

(合鍵…持ってらっしゃいますよね?よろしければ、見に行って欲しくて…)


そっか、同棲してるとか…知らないのか


「わ、分かりました…」

私は渋々了承してしまった。




今までは体調を崩しても仕事に行くほど、お仕事バカだったリエーフが仕事に来ないなんて。



何かあったのかな…


重い足取りでリエーフのいる家に向かった。











ガチャッ


「リエーフ?」
部屋はとても静かで、人の気配を感じなかった。


奥に進むと…


「洗濯機…?」

動いてる。
機械なんて絶対使えないはずなのに。
ましてや洗濯機なんて、洗剤を入れる場所すら知らなかったのに。

綺麗なお風呂場。
ちゃんと掃除…してるのかな?





リビングの方に行くとやはり部屋は私がいた時と変わらない。
すごく綺麗だった。


てっきりもうゴミ屋敷みたくなってんのかと思ってたけどそんなことない。


水周りも綺麗。
家政婦さんでも呼んだのかな?



ソファーの上には問題のリエーフがいた。



「リエーフっ!!??」






周りには血が着いていて、リエーフはそこに倒れるようにしていた。




思わず体を揺さぶると…

『ん、ンン?』

「リエーフ…」

ただ寝てるだけだった。



『あなた…なんでここに?』

「職場の人から連絡あって、リエーフが来ないって…でも、一体なんでこんなことになってるの?」

『あ、そうだ…』


『あなた…僕ね?』










『あなたに今までどれだけ助けられたか、やっとほんとにわかったかもしれない。この血は包丁で…。僕今まで料理なんてしたこと無かったから、包丁で自分の指切ったと思ったら慌てて包丁落としちゃって…、お風呂の掃除も、洗濯も、畳み方わかんないし洗剤の場所わかんないしで訳わかんなくなっちゃって』








結局、リエーフはそんなこんなでそのまま知らずに寝ちゃうほど疲れてたんだって。





別に私はそこまでしろなんて言ってないしさ、

でも、リエーフらしい。









『僕、1人で頑張ったよ!』

と、満面の笑みでこっちを見るリエーフは愛おしくてたまらなかった。



『今までのあなたの大変さ、わかった。』

「そう、ここまでしなくていいのに。」


リエーフは血だらけになるほど苦手な包丁を使ったり、慣れない機械使ったり。


「そんなに私に戻ってきて欲しかったの?」


『僕、あなたがいないと生きていけないかも。』





そんなことを言った。

なんだか安心した。




ーーーーーー

リエーフside


やっと気づいた。
あなたの大切さ。


今まではこれが当たり前だと漠然と思って生活していた。

気づいたら洗濯が終わってる、

気づいたらご飯ができている、

気づいたら部屋が掃除してあって、

気づいたらお風呂が洗ってあった。



僕のプライドかな。

甘え方が違ったのかな。

『ねぇねぇ、どうやって甘えればいいの?』

「なに、あれ甘えだったの?」

『そう…かな?』

「下手か!あれはただの高いプライドにしか見えなかったぞ!」

『あぁ!そんなことより、あの一緒にいた男は誰なんだよ!!』

「あれは私のお兄ちゃん、浮気なんかじゃないって!」


『はぁぁぁぁ〜良かったぁ〜』


僕は幸せ者だった。

こんなにも愛されて、こんなにも尽くされて。

大好きな人に辛い思いをさせていた。

一生幸せにするって言ったのは僕の方なのに。

『あなた、好き』

「…私も」

『プライドなんていらない。』

「ちゃんとしてよ!心配したんだからね?」

『…ありがとう』

「こちらこそ」












いつもありがとう。

プリ小説オーディオドラマ