第5話

ありがとうって
1,287
2018/06/19 10:43
あなた

失礼しました


あいにく、今日は日直。


朝が早い上に、することもないのでぼーっとするだけ。


会議が始まってしまうからという理由で、日直は学校に来る時間が指定されている。



なにをしようかと天井を仰いでいると、聞いただけで誰だかすぐにわかる、あの声が。


山田涼介
山田涼介
おっはよ、あなた
あなた

っ、おはようございます

山田涼介
山田涼介
なんだよ、つめてぇな

またツッコミどころがある先生の発言だが、無視した
あなた

すみません、

山田涼介
山田涼介
いいよ、一緒に教室行ってくれれば
あなた

は?

山田涼介
山田涼介
行こ!


そういうと先生は私の腕を掴んで走り出す。

この時間だから廊下に生徒は1人もいないし、先生だって職員室にいるだけ。
どれだけ猛スピードで走ったって、怒られることはなかった。
だが、私は忘れていた
あなた

せ、せんせ……ハァッ...

山田涼介
山田涼介
あれ、あなたもうバテてんの?
先生は体育教師志望だったのだ。
あなた

しょう、がないッ...です…ょ


肩で息をするほど息が上がって、うまく喋れない。
山田涼介
山田涼介
ほら。
そう言って先生は、手を伸ばしていた。
あなた

な、なんですか……?

山田涼介
山田涼介
荷物貸して、それだけでも違うだろ?

私は乱暴に荷物を渡す。
山田涼介
山田涼介
うわ、おっも!
そう言いながらも先生は嫌がらずに持ってくれる。
あなた

あ、あの……

山田涼介
山田涼介
ん?


ありがとうって言わなきゃいけないのに、うまく言葉が出てこない。
あなた

……

山田涼介
山田涼介
なーにー?
あなた

その……

山田涼介
山田涼介
ん?なに?
あなた

な、なんでも……



言えないのは山田先生だからだろうか…



理由は一体、なんなのだろう、

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