前の話
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☆0☆
たぶん…
半年くらい前から。
あなたは あまり、笑わなくなった。
臆病で前には出てこないあなたは、
自分の気持ちを素直に出せない。
そんな癖は、もう、とっくに気づいてるよ。
だって、あなたを愛しているから。
☆1☆
「なぁ 〇〇?」
〇「なにぃ?」
「久々、俺ん家 来ぉへん?」
〇「え…どうして?」
偶然 会った 幼馴染。望。
望「オカンおらんから、ピザでも宅配してもらおう思ってな。」
〇「で?なんで、私が?」
望「お前アホか!ふたり居れば、デッカいの頼めるやろ!」
〇〇「や、小さいの頼めばイイでしょ!?」
望「エエから!」
話すのも久々だったからさ…
しかも、なんだか背も伸びて、一気に大人っぽくなってたから、余計に…
そんな私の気持ちを知らないであろう彼は、
私を強引に家の中へ連れ込んだ。
こんなとこ、知らない人に見られてたら、
メッチャ怪しまれるじゃん!
なんて、私は心の中で、少しキレていた。
はずだった…
☆2☆
〇「うわぁ〜なつかしぃ〜!」
この家に入るのは、2年ぶりくらい。
望「〇〇さぁ、まだあの男と付き合ってるの?」
〇「えっ、あ〜まぁね。」
望「なんやその、まぁねって?」
だって…
形の上では、カレカノだけど…
望「お前、、、好きでもないのに付き合うてるんか?」
〇「え…」
それは、私の中には無い答えだった。
しかも、ベストアンサーだと、その時の私は思ったんだ。
望「アホやなぁ〜〜情だけなら、別れろ別れろ〜!」
呆れた口調で言われた。
もし彼が、友達から そんな風に言われたら、別れを切り出すのだろうか?
いや。
そんな度胸はないだろう。
優し過ぎるんだ。
でも…
そんな所が、好きだったりするから…
☆3☆
ピンポーン♪
望「やっぱ ピザは、デッカいのやなぁ〜〜」
ルンルンしながら、デッカいピザを頬張る姿を見ていたら、幼い頃を思い出した。
〇「ねぇ?小さい時にした約束、覚えてる?」
アレは確か…
小学1年生の時。
帰り道に大きなカエルがいて、、、
望「どないしたん?怖いん?」
〇「うん…怖いから、ここ通れない…」
立ち往生している私を見つけた望は、そう声を掛けると、泣きそうな私を見て言った。
望「俺と一緒やったら、何にも怖ないで!」
ウソだ…
心ではそう思っていたのに、
望が差し出した右手を無視できなくて…
その手を繋ぐと望は走り出し、アッっと言う間に、カエルを通り越して家に着いた。
望「ほらな!〇〇が怖い時には、俺を頼ればエエねんで!?」
『怖かったドキドキ』と『走ったドキドキ』に混ざって、
『もう一つのドキドキ』を初めて体験した。
望「お礼は、チョコな!デッカいのやで!」
☆4☆
私はその年から ずっと、望にバレンタインチョコを渡した。
私に彼氏ができるまで…
望「あ〜、約束ってか、お礼はチョコってな。」
〇「懐かしいね。」
そう笑って望を見ると、
さっきまでピザをモグモグしてたとは思えない、どこかセツナい顔をしていた。
望「俺ら高校違っちゃったからな…アカンかったわ。」
〇「え、何が?」
私の問いには答えず、ソファの隣に座り…
「キレイ なったな。」と、私の髪にそっと触れた。
望…
違う人みたい…
元々、可愛らしい顔立ちだったけど…
今は、まるでモデルさんの様にキレイに整って…
声も語り方も、どことなく艶っぽくて…
こんな近くで見られたら、照れちゃうよ//…
望「俺はずっと、〇〇のチョコ 待っとるんやけどな…」
〇「えっ// 何言ってんの?彼氏がいる人からもらっても嬉しくないでしょ?!」
望「せやから…
__________別れろよ…」
☆5☆
ここで「うん」と言えば、
すぐにでもキスできる距離まで近づいている望…
私の返事を待たずに、髪を触れたその手で肩に触れた。
その瞬間、
私はまるで、そんな経験が無い子の様に“ビクッ”としてしまった。
それも当たり前だった。
彼との最後のキスも、思い出せないくらい前だった。
こうして、触れられたのでさえも…
これが…ベストアンサー………
…でも…怖い…
望「大丈夫や。俺が…助けたるから。」
そう言われて、望が唇に触れると、不思議と体は抵抗しなかった。
望は、私の心を読んだかのように…
私はこうして『イイワケ』を作った。
☆6☆
最後に…
悪あがき。
ずっと行きたかった、夜の街のイルミネーション。
最近の彼は、ずっとこんな感じ。
私だけ はしゃいで…
バカみたいに、はしゃいで…
今日、終わりが来ることを彼は知らない。
だから、いつもと変わらない…
最後なのにな…
周りのカップルは、手を繋いだり、肩を組んだり、腰に手を回したり、、、
キスをしてる人もいるのに…
私は、辛い心を閉じ込めて、笑顔を振り撒き、おどけてみせた。
そんな私を見て、楽しくなさそうに彼が笑った。
その隙を狙って、、、
思い切って…
本当に、思い切って…
手を繋いでみた。
この場の雰囲気もあるし、久しぶりの温もりだし…
少しはドキドキしたりして、私の事、見直したり…
しないかな…
☆7☆
「何してんだよ!人前で恥ずかしいだろっ!!!」
周りのカップル達がビックリするほど、彼は声を荒げた。
私達だけだよ…
カップルっぽくないの。
付き合いたての頃は、手を繋いで歩いてくれたのに…
〇「ごめんなさい…」
「お、おん。行こうか…」
悪あがきは、本当に悪あがきに過ぎなかった。
そう簡単に、人の心は変わらないんだな。
私は、寒さの中、かじかんだ心で終わりを告げる。
予定通り。
輝く、大きなツリーの下で。
〇「大学って、どんなところ?」
「え?きゅ、急になに?」
私達は付き合って半年しか同じ学校へ通っていない。
〇「来年、受験だから…知りたいなぁって思って。」
「一緒の ところ受験するの?」
〇「う〜ん?まだ分からない。でも、また一緒の学校になれたら嬉しくない?」
そう聞いても、うつむくだけで返事がない。
1分?2分?
しばらくの沈黙が永遠に感じた…
☆8☆
そんな沈黙を破った彼の言葉は…
「大学はさ……新しい出会いがある場所なんだ。」
私の予定を狂わせた。
私とは月に一度くらいしか会えなかったのに…
彼は私の知らない場所で、
私の知らない新しい生活をしていたんだ。
「先生や仲間や……
……新しい恋。」
〇「え…」
新しい…
恋…?
「好きな人ができたんだ…」
好きな人…?
こんなはずじゃ…
予定を乱された私は、
もぉ、どうしていいのか…
修正できない状況に、かじかんだ心は私の表情ともに凍りついていた。
☆9☆
「俺が告った時、覚えてる?」
私はまだ付き合っていない彼に送ってもらい、帰ってきた。
家の前で、少し会話をしていると、
望「よっ!〇〇〜」
〇「あ!久しぶり〜(笑)」
自転車で スゥ〜と横付けしてきた、他校の制服を着た望。
卒業式 以来に会う望を見て、私は一気にテンションが上がった。
〇「あ、こちら学校の先輩。で、こっちが幼馴染。望は、家がすぐそこなんです!」
「そうなんだ…」
望「なぁ〜〇〇 聞いてぇ!今日さ〜淳太の恋話 聞いてん!」
〇「呼び捨てダメ!淳太先輩でしょぉ〜」
望「ええの!でさ、アイツ電車で会った知らない子を好きなんやて!ウケるやろぉ〜〜!」
〇「いやいや、ウケるポイントが分からん分からん〜(笑)」
テンションが上がったまま、彼をそっちのけで話していると…
「俺 帰るわ…またね。」
〇「えっ、あ、送ってくれて、ありがとうございます!」
「お、おん…」
☆10☆
彼は、なにか言いたそうな感じだったが、そのまま帰って行った。
と、思ったら…
「チョット…話しがあるんだけど…イイかなぁ?////」
と、戻ってきたんだ。
そして、告られた。
寡黙な先輩は、とても大人に見えて、
私は、その雰囲気に、憧れを感じていた。
だから、、、付き合い始めた。
「あの時、幼馴染と話してる〇〇の笑顔が、可愛すぎて…
渡したくないって思ったから、戻って告ったんだ。
けど…
〇〇は、あんな笑顔を俺に見せたことは、無かった。」
私…
彼のコトが好きだった。
望とは違う、あまり自分をアピールしないところ。
望とは違う、私の話しを微笑んで聞くだけのところ。
望とは違う、強引じゃないところ。
望とは違う…
「や…一度だけあったな。バレンタインチョコをくれた時…
☆11☆
「箱に入った小さくて可愛らしいチョコを見て俺が喜んだら…」
_____
〇「やっぱり、望とは違うなぁ〜望はデッカいチョコじゃないと嫌がるの〜変な奴でしょぉ!?」
_____
「…って、満面の笑みで話してた。」
彼はそう話すと、パッと顔つきが変わった。
「少し前に…女の子に告られたんだ…」
彼が…
好きな人の話しを始めた。
「その子が俺に話しかけてくる時の笑顔は…〇〇の笑顔に似ててさ…恋してるんだな…って感じたんだ。」
恋…
望とは違う、デッカいチョコじゃなくても、大丈夫なところ…
それは…
私じゃ無くても…
大丈夫だってコト…なんだね…
彼も また…
付き合ってスグの頃に見せてくれていた笑顔になっていた。
好きな人って…
誰かに話すだけで、そんな笑顔になれるの?
知らないでいたのは、私だけだった。
望…
心が勝手に、呼んでいて…
涙が…
溢れた…………
☆12☆
彼の車で送ってもらうのも…最後。
「〇〇…今まで、ありがとう…
幸せになれよ。」
最後に彼は笑った。
降りたまま立ち尽くす私を、彼の気持ちは気に留めることも無く…
車は静かに…去って行った。
私…バカみたい…
別れる為の『イイワケ』なんて、作らなくて良かったのに…
望「なんて顔してんねん。」
うつむいていた顔を上げると、
いつもと変わらない望がいた。
そんな、近づいてくる望が笑顔なコトに腹立たしかった。
〇「ばかっ!!!」
望「はぁ??誰がバカやねんッ?!!!」
どうしてだろう?
何で私 怒ってるんだろう?
それより…
どうして…こんなにも…
愛おしいの……??
私は、ゆっくりと近づいた。
望の胸におデコをあて、
「ばか…」と呟いて…
泣いた…
☆13☆
私は、ずっとずっと…
望を待っていたんだ。
毎年 渡していたのは、デッカいチョコだけでは無かった…
いつだって、デッカい想いも一緒だった。
『もらえない返事』が当たり前になっていた恋は、いつしか空気の様になっていた。
〇「いい加減…
_____好きって…言ってよ…」
もぉ…催促だよ…
望「アホか…もう好きやて…分かっとるやろ…」
そう言いながら ゆっくりと抱きしめられた。
望「お前こそ…寄り道し過ぎや。」
〇「…ごめん……」
そう言って、望を抱きしめ返した時 気付いた。
〇「冷たい…」
望「おん。ずっと待っとった。」
私達はもう…
待つことも、待たされる事も無い。
もちろん『イイワケ』もいらない。
やっと、素直になれたから。
☆14☆
望「お礼は、チョコな!」
〇「分かってる。デッカいのでしょ!?」
今年からまた、デッカいチョコを作る。
でも、前とは違う。
〇「チョコのお礼は?」
望「ほな〜〜俺の部屋 来る?」
なんて、恋の進展も♡
☆fin.☆
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。