第143話
感謝祭6:幻太郎
そして時は過ぎて3ヶ月後…。
小生は柄にもなく走っていました。
恥ずかしいくらいの猛ダッシュ。
右手には高級そうな縦長の箱が握られている。
目的のアパートに着くと、不思議と荒ぶった呼吸が収まる。
反対に、心臓の鼓動は早くなった。
ピンポーン
小さなインターホンを押すと、中からパタパタと足音がする。
慌てて嘘をつくと、あなたは微笑んだ。
慌てて髪の毛を抑える。
あなたは小さく笑って、扉を大きく開けた。
こじんまりとした部屋に足を踏み入れる。
やたらとシンプルで、しかし女の子らしさも感じられる。
きれいな部屋だった。
喫茶店の店員なのに知らないなんてあり得るのか…?
なんて思いつつ、手元をぼんやりと見る。
Harrodsをはろるどと読み間違えた割には見事な手捌きだった。
しばらくすると、紅茶のいい匂いが漂う。
などと茶番劇をしながら、コップをテーブルに運んで座る。
飲み口を近づけると、芳醇な匂いが鼻をくすぐった。
熱い紅茶を口につける。
二人でひとしきり紅茶を堪能したあと、いよいよ本題を切り出す。
隠していた箱を取り出してあなたに見せる。
そう言いながら、あなたは丁寧に箱を受け取った。
あなたはゆっくりと蓋を開ける。
途端に顔が輝いた。
あなたは、少し震える手でそれを持ち上げた。
この笑顔が見られるならお金なんてどうでも良かった。
あなたが乱数の話をする時は少し気に食わない。
柄にもなく嫉妬しているのだろうか。
誤魔化すように立ち上がり、あなたの方に行った。
丁重にネックレスを手渡され、細い首にかける。
髪の毛をかき分け、うなじを顕にしてネックレスをつけた。
あなたはいつの間に出したのか、手鏡を持っていた。
首元に光るその石をうっとりと見つめる。
あなたは感極まった、というような声で言った。
とても嬉しそうにされて、僕も自然と笑顔になる。
あなたが振り返った。
首に手を回されて抱きしめられる。
あなたは、私の胸に埋めていた顔を上げて、目を閉じる。
俺はその意志のとおりに、唇と唇を重ねた。
二人で微笑んで目を合わせる。
これ以上に幸せな時間などあるのだろうか。
少なくとも僕には思いつかない。
愛する人と居られることが、
愛する人の笑顔がこんなにも幸せなものだなんて…。
改めて、この想いを口にする。
あなたの首元には、虹色に光るブラックオパール。
この世に1つだけの、ネックレス。
___貴方は小生だけの、愛する人です。
fin.
___________________
かなり長くなってしまいましたが、ここまで読んでくれてありがとうございました!
ヒプノシスマイク本編はまだまだ続きますので、
これからも暖かい目で見守ってやってください。
今後とも、どうかよろしくお願いいたします。 かんぱち