第63話
毒島メイソン理鶯 3話
カバンを漁り、筆箱から取り出したのはハサミ。
持ち手を両手で握り、座りながら寝ている男性に向け、ゆっくりと近付く。
片手を伸ばして男の人の肩をゆさぶろうとした、瞬間。
ドスッ
数秒にも満たないコンマ単位の出来事。
男性は私が肩に触れる前に目を覚ました。
ハサミを持った方の手首を掴まれ、引かれ、押される。
気が付けば地面に押し倒され、耳の横の床には私が握ったままのハサミが刺さっていた。
そして今。
恐怖に声帯も震え上がった。
男性は虚ろな目で私を見る。
あまりにも長い数秒が過ぎる。
男性は突然目を見開いた。
当惑した顔で問われ、こちらも困り顔で返す。
何をしている、とは…?
貴方が押し倒したのでは…?
テント内に困惑が充満する。
ふと、男が私の頭の上に転がっていたメモを見る。
その一番下には
『アブナイかもしれないから、とりあえずハサミ(またはカッター)を持って男の人を起こす!!!!(アブなかったら刺す)』
と赤字で書いていた。