第116話
神宮寺寂雷 8話
ベッドの隣においてある椅子に座り、弁当を膝に置く。
横に避けられたベッドサイドテーブルの上にあるものを見て納得する。
そこには、半分以上残された病院食が放置されていた。
私は力なく口角を上げた。
師長はいつも、はやとくんが残したご飯を見ると、長い話をしだす。
ご飯の栄養の大切さ、とか食べるという行為の効果、とか。
はやとくんにだけじゃなくて、その師長の話はこの病棟の患者さんなら誰もが聞いたことのある話だった。
体が弱くてどうしても食べ残してしまう患者さんもいるけれど、そうでない人達もいる。
病気で衰弱しきった体では食欲が沸かずにあまり食べられないことが多い。
そういう患者さんには食べるよう諭すのが正解なんだけど…。
病気のせいで、年々体が食べ物を受け付けなくなってきているらしい。
だから、師長の長話は苦手がっている。
膝の上においた弁当を見つめる。