ピピピピッ ピピピピッ ピピピピッ
俺は、うるさい声と音に邪魔をされ、
重たい瞼を上げる他なかった。
それ大事!
いきなりガバッと起きた俺に、有紀は驚かない。
有紀が部屋から出たのを確認すると、制服に着替えた。
跳ねてる髪の毛を適当に整え、家を出る準備をする。
下に降りて食卓に向かった。
俺は、有紀と父さんに挨拶を済ませ、早めに朝食を食べた。
なるべく、家にいたくない......
いや、父さんと一緒にいるのが嫌なんだ。
有紀の笑顔を確認し、家を出ようと、手をかけたときだった。
いきなり、父さんに呼び止められてビクッとする。
振り替えると仏頂面の父さんがいた。
早く出たい。
俺の秘密がバレていないか。
父さんは、バレるのは許さない、とこちらを見下ろしている。
バラすものか。
俺だって言いたくないんだ。
有紀は、俺の秘密を知らないので聞いてないふりをする。
父さんの仏頂面は、安堵の表情にもならず、
とだけ言って、奥に歩いていった。
それに続くように俺は家を出る。
いつまで経ってもあの緊張した雰囲気は苦手だ。
なぜ、俺は母さんではなく父さんについてきたんだ。
大雅は、満足な顔をせず歩いた。
学校に着くと、
なにやら俺の席の横で世良があたふたしている。
世良は、小さな大声(?)で俺にそう言った。
一部険悪な雰囲気の中、
先生が強制的にみんなを席に座らせる。
たいいく?
あ、体育!
え、いやいや......まて、よ?
も、もちろん......着替えるんだよな、?
俺は、段々声が小さくなりながらも言った。
あ、あぁー......ですよね......。
ど、ど、どうしよう......。
こんなに、秘密をバラさずに過ごす策を考えてるってのに、
お前らうるせぇよ。
俺の思考の邪魔すんな。
とにかく、だ。
まだあやふやだけど。
でも、今はそんなこと言ってる場合じゃない。
嶺音は笑いながら教室出て、
みんなも嶺音に続いて出ていった。
誰もいなくなり、安堵のため息をついたのも束の間。
すぐにドアが開いた。
教室に入ってきたのは柳之助だった。
柳之助は笑顔で手を振り、教室を出た。
あっぶねー。
なんとかバレずに済んだ。
これがバレてたら俺、この学園にいられねぇからな。
なんとしても隠し通さなければいけない。
とにかく、さっさと着替えて体育に行ったほうが身のためだ。
体操着って意外と薄い。
胸部分の“俺専用”のプロテクターがバレたら俺の秘密もバレる。
今使ってるやつじゃ、触られたら終わりだな
俺は、プロテクターがバレるのは命の危機同然なので、
ジャージを上に着て体育に向かうことにした。
もう既に迷子になりかけだったが、
なんとかグラウンドに向かおうとしていた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!