俺の家から電車で三駅のところにある広くて綺麗な家。
そこが時雨の家だ。
住んでるのは時雨だけで、元々時雨の妹も住んでたけど病死してる。
俺はインターホンも鳴らさずに家に入っていった。
満面の笑みを見せた時雨は、ぐちゃぐちゃの部屋にある広いテーブルの前にいた。
ぷぅっと時雨は頬を膨らました。
真剣な顔をした時雨は、ある資料を俺に渡した。
資料に書かれていることは、ある人物の情報だった。
皇隼人という名前は知らなかったが、顔は見たことがある。
ここに来る前、とは俺が東京に来る前、長野にいた頃の話だ。
時雨は、はっきりとした口調で直ぐに答えた。
時雨は、俺の問いを聞いて答えを濁した。
正直、俺がこの皇って男に会ってほしくない理由がわからない。
でも、多分時雨の知り合いとか、そんなんだと思う。
皇隼人という男は、俺がまだ女だった頃にチンピラ達に絡まれてる俺を助けてくれた奴だ。
夢に出てきた奴が、東京に来てるなんて予知夢かよ。
俺は学校の校門の前で少し立ち止まった。
大きな桜の木が花を散らして緑で生い茂っている。
風に吹かれて葉がゆらゆらと揺れていた。
丈陽が後ろから俺に声をかけた。
俺は小さく笑うと丈陽と一緒に校門をくぐった。
そう、別に体調が悪いわけじゃない。
ただ、気になることがあるだけだ。
『皇隼人が俺の性別を知ってる』
他の奴らからすればどうってことない話だが、俺の場合は人生の終わりと言っていいほど最悪な話だ。
教室に着くとみんな揃っていた
そんな話をしてると、嶺音が近くにやって来た。
文化祭か。
もうそんな時期なんだな。
嶺音と柳之助は、委員会の仕事として文化祭の予算書を確認していた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。