作戦はだいたい固まった。話し込んでしまってあまり睡眠がとれなかったけれど、どうせ今夜は興奮して眠れなかっただろう。
鉄は熱いうちに打て。ということで、わたしは翌日すぐに動くことになった。
寝不足なのか緊張なのか、ドキドキで頭をぼうっとさせながら藤倉君のいる隣の教室へと赴いた。
隣の教室を訪ねると、藤倉君はどこにいるかすぐにわかった。そこに女子の人だかりができていたからだ。しかし、何かのギャグのように女の子の壁に隠され埋まっていて姿はよく見えなかった。周囲にきゃいきゃいと黄色い音声が飛びかい、何が何やらわからない。
と、もう一度呼んでみたがとても声が届くとは思えない。
しかし藤倉君はわたしの小さな声を聞きつけて、
と返事をしてガタッと席を立ち、女子の山の中から出てきてくれた。そのまま背中を押されて教室の外に出る。
廊下を少し行ったところで藤倉君がはーと息を吐いた。
モテるとは思っていたけれど、よもや毎時間あんな感じとは思っていなかった。生活に色々支障が出そう。
無防備に笑顔を向けられてあやうくときめきそうになったけれど、得意の無表情でやり過ごす。彼はわたしが恋愛感情を全く持っていないと思っているから、こんなに親しげにしてくれているのだ。勘違いは無用。
わたしは第一の作戦を切り出した。
藤倉君が聞きながらみるみる真顔になっていく。わたしの顔を怒ったように見ている。
急に両手をがしっと握られて変な声が出た。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。