第7話

作戦会議-3
861
2022/04/24 23:00
有村尚
有村尚
……え
有村優
そんな歳でモテまくっているとそのうち価値観がおかしくなって、すぐに女なんて食い散らかしてあなどるだけの嫌な奴になる。おれの周りにもそういう奴はいたからね
有村尚
有村尚
……ええぇ
有村陽
それが天然でモテる奴の末路だよ……
 後ろで陽兄が呪いのナレーションのように言ってくる。

 モテる奴の末路……まるで哀れなもののように……。いやでもどうしよう。藤倉君、このままだと、ますます手の届かないところに。

 優兄ちゃんが頷いて言う。
有村優
つまりね、尚。お前にチャンスがあるのは今だけなんだよ。汚れてしまったらお前はもちろん、女なんてみんな使い捨ての肉塊にくかいかアクセサリーにしか思わなくなる
 肉塊……アクセサリー。並べるとなんだか猟奇的だし、そのふたつが同じものを表しているとは思えない……。絶望で目を白黒させながらも優兄に助けを求める。
有村尚
有村尚
お兄ちゃん……わたし、どうしたらいい……?
有村優
おれに任せて。おれの可愛い天使、尚が幸せになれる方法を考えるから
 優兄ちゃんはイタリア人男性のようにさらりと褒めを交えながら座っていた椅子をぐるりとまわして、天井を見て、少し考え込んだ。
有村優
悪いことばかりじゃない。まず、藤倉君にとっては今、女の子の顔はどうでもいいはずだよ
有村尚
有村尚
それは……
 優兄ちゃんは眉をハの字にしたわたしに優しい声で付け加える。
有村優
尚が可愛くないわけじゃないよ。華奢きゃしゃで透明感があって、花のように可愛い美少女だ。でも学校じゅうの可愛い、目立つ美人がそいつを狙っているんだって言ってたろ
有村尚
有村尚
う、うん
 優兄ちゃんの言いたいことはわかる。

 今の彼にとって、顔が可愛いから付き合うというのはないだろう。その基準で戦わなければならないのは正直キツい。だからむしろ良いことなのだと。
有村優
尚、お前のいいところはね、考えてることが顔に出ないことだよ
有村尚
有村尚
お兄ちゃんそれわたしのコンプレックス……
 表情筋があまり機能していないのか、わたしは感情が薄く見られがちな方だ。声質もそんなに高くないし甘くもないのもあって、喜んでいても慌てていても悲しんでいても冷静に見られることが多い。
有村優
いや、それは素敵な個性だし、取り柄なんだよ。現に今日だって、尚が藤倉君のことを好きだって、バレずにすんだだろ
有村尚
有村尚
そうだけど……
有村優
尚、お前は今藤倉君の特別な位置にいる。本当にチャンスは今しかないよ
有村尚
有村尚
うん、うん、頑張る
 その時扉がばんと開いてお母さんが入ってきた。
お母さん
あなた達、こんなとこで揃ってしゃべってないで、さっさと夕飯食べなさい!
 お腹は減っていた。
有村優
じゃあ夕食後にまた、作戦会議しよう
有村陽
俺ももちろん参加するからな
有村尚
有村尚
陽兄……いいのに。大学行って疲れてるんじゃないの? 今日はゆっくり休みなよ
有村陽
いーや! 参加する! 元気ならありあまってるからな!
 そうしてわたしはお兄ちゃん達と夜通し今後の作戦を練った。

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