後ろで陽兄が呪いのナレーションのように言ってくる。
モテる奴の末路……まるで哀れなもののように……。いやでもどうしよう。藤倉君、このままだと、ますます手の届かないところに。
優兄ちゃんが頷いて言う。
肉塊……アクセサリー。並べるとなんだか猟奇的だし、そのふたつが同じものを表しているとは思えない……。絶望で目を白黒させながらも優兄に助けを求める。
優兄ちゃんはイタリア人男性のようにさらりと褒めを交えながら座っていた椅子をぐるりとまわして、天井を見て、少し考え込んだ。
優兄ちゃんは眉をハの字にしたわたしに優しい声で付け加える。
優兄ちゃんの言いたいことはわかる。
今の彼にとって、顔が可愛いから付き合うというのはないだろう。その基準で戦わなければならないのは正直キツい。だからむしろ良いことなのだと。
表情筋があまり機能していないのか、わたしは感情が薄く見られがちな方だ。声質もそんなに高くないし甘くもないのもあって、喜んでいても慌てていても悲しんでいても冷静に見られることが多い。
その時扉がばんと開いてお母さんが入ってきた。
お腹は減っていた。
そうしてわたしはお兄ちゃん達と夜通し今後の作戦を練った。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。