『あぁ、ほらあの子でしょう?』
『例の奇病の…』
『腕もあんなに包帯あって…』
『体から花が咲くのでしょう?』
『怖いわ…』
『私たちに移らないかしら?』
今日はゆうやに
遺書を書きます。
「ゆうやへ
あなたがこの手紙を読む頃
私はいません。」
「ゆうやと出会ってもう2年。」
「すごく楽しかった。」
「一緒にプール行ったね。」
「一緒に花火みたね」
「一緒におふざけ動画撮ったね。」
「一緒にクリスマスケーキ作ったね」
「一緒に海行ったね。」
「ゆうや足つって溺れかけてたね(笑)」
「あぁ、あと
ケンカも100万回ぐらいしたね。」
「でも」
「もう、できません。」
パタッ
「あなたのキスも
ハグもあたたかさも」
ぼろぼろっ
「全部」
“あぁ”
「他の子のものになるんだね。」
“「死ぬ」ってこういう事なのか”
“私の声も気持ちも”
「どうか」
“つらさも喜びも”
“大切な人に”
“伝えられなくなる”
「その人を幸せにして。」
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。