あなたside
「名前は何だ?」
そう聞いてくる上弦の鬼。
私は素っ気なくそう返したが、心の中までそうは行かなかった。
心拍数が高くなる。
勝てるのか、今の私で。
「そうか、俺は猗窩座だ。じゃあ、あなた。」
「お前も鬼にならないか?」
鬼からの素っ頓狂な誘いに思わず口が開く。
鬼になる?
誰が。私が?
「鬼なれば何年でも生きることが出来る。 しかし人間はどうだ?」
上弦がそういった時、こちらに襲いかかってきた。
型とは言え、上弦の攻撃力には敵わなかったのか作っていたフィールドが壊れる。
鬼はまた体制を整え、
“炭治郎に襲いかかった”
炭治郎に当たる直前で技をだす。
酷い手負いのものから狙うとはそれでも上弦か。
「俺とあなたとの話の邪魔になると思ったからだ。」
剣先を突きつけ、激しい怒りに身を任せた。
「鬼になれ。あなた。そうすれば強い身体を手に入れることが出来る。」
鬼になる?
強い身体を手に入れる?
そんなものどうだっていい。
ただ。
そこからは自分でも覚えていないほど、激しい戦いだった。
私は猗窩座からの攻撃をもろにうけた。
私が出した攻撃はいとも簡単に治る。
鬼だからだ。
だからといってあれを羨ましいとは思わない。
「あなた!! 身体の体温を下げるんだ!!」
全集中の呼吸を使う際、普通は体温を可能な限り上げる。
しかし、私に聞こえてきた声は
体温を下げろと口にした。
“お兄ちゃんだ”
声を聞くだけでわかる。
私は水の呼吸の使い手だった。
兄も。錆兎も。
勝手にこんな事していいのか分からないし、自分自身、今からどんな技が出るのか知らない。
だけど、これに掛けるしかない。
右肩の辺りが痛むような冷たさ。
水月鏡花__ とは
目で見ることは出来るが、手に取ることが出来ない儚い幻の例え。
あなたはそれを、今は亡き兄と錆兎に重ねたのだ____
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。