_次の日
俺はまたさとみくんのいる病院へ行った
さとみくんがいつ目を覚ましても寂しくないように、みんなと撮った写真も持って行った
病室に飾ろうと思ってて、写真立ても一緒に
(ガララララ)
病室のカードは昨日と違って開いていた。まだ昼前だからだ
ベッドにはもちろんさとみくんが横たわっていて、安心した表情で眠っていた
さとみくんがそんなに顔をするとこっちも口が緩んでしまう
昨日のことをすっかり忘れたみたいで、すっきりした
病室の端っこにあった丸イスをベッドの横に置いた
カタン
イスを置いた音が嫌というほど響く
病院は静かすぎて物音を立てたら目立ちそう、みたいなのを思いながらイスに座った
俺はさとみくんの方に体を向けた
寝ている人と自分しかいないのに緊張してしまう
まあ多分さとみくんだからなんだと思うけど
春の柔らかい光が当たる顔はすごく綺麗で、絵に描いたみたいだった
何故か自然と手が伸びてさとみくんの頬を指でなぞった
頭や腕、足には包帯が巻かれていて痛々しかった
この体で俺を守ってくれたと考えると、今すぐにでも謝りたい気持ちになった
これじゃあ好きだなんて言える余裕これっぽっちもない
4人にも協力してもらったのに、悪いことをしてしまった
溜め息混じりに誰も聞かない謝罪をした
頬にあった手を戻して、さとみくんの手を握った
_お願い、早く目、覚まして
念を送るように、お願い事をするように
目をきゅっと瞑って少し手に力を入れて
今できるのはこれくらいしかないし、今2人だけでいる、ということが少し誇らしく感じた
誰にも聞こえない小さな声で言った
初めての告白………いやこんなんじゃ独り言みたいなもんだ
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!