第78話

恋愛症候群⑤《さとりーぬ》
3,644
2020/02/03 12:10
医者
もうさとみさんは中にいらしているので、ご自由にどうぞ
なーくん
なーくん
はい、ありがとうございます
ころちゃん
ころちゃん
……莉犬くん
ただ中に入るのが怖くて怖くて、躊躇ってしまう
たまにさっきの道路上のことが脳裏にうつる
怖くて、怖くて
手が震えて、力も入らなくて
あの冷たい手を思い出すと足もでない
ジェルくん
ジェルくん
なーくん
なーくん
なーくん
うん
ジェルくんは病室の扉を開けた
ガララララ
向こうの窓はもうカーテンが閉まっていた
隙間を見るともう外は真っ暗だった
ジェルくんからなーくん、るぅとくん
ころちゃんは俺の手をひいて中に入っていった





_分かってる、成功したって、分かってるのに
きゅっと目を瞑ってころちゃんの手もぎゅっと握って
足を動かした
ころちゃん
ころちゃん
大丈夫
莉犬くん
莉犬くん
………うん
ころちゃんは俺に聞こえるくらいの小さな声で言った
なーくん
なーくん
さとみくん…………
なーくんの声で俺は目を開けた
ベッドを囲むように並んだ俺達はみんな同じ方向を見つめた
さとみくんは痛々しいようで、安心したようで、よく分からないけど俺も少し安心できた
ちゃんと寝息はたてていて、辛そうな顔をしていないから
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るぅとくん
るぅとくん
……良かったですね、さとみくん
なーくん
なーくん
そうだね、数日後には目、覚めるっていうし
ジェルくん
ジェルくん
そーやな、さとみやしすぐやろ
ころちゃん
ころちゃん
wwwそうかも
莉犬くん
莉犬くん
……………だねw
なーくん
なーくん
……………………………じゃあ、そろそろ帰ろっか!
ころちゃん
ころちゃん
うん
るぅとくん
るぅとくん
ですね!
ジェルくん
ジェルくん
そやな
莉犬くん
莉犬くん
わかった
それでみんなで一緒に近くのバス停まで歩いていった






















また明日、さとみくんのとこに行こう
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また、夢を見た








今度は上手くいった場合のこと
昨日横断歩道であったことが上手くいった場合のこと
あの車は普通に通り過ぎていって、俺はさとみくんとそのまま渡れた
その夢
羨ましいなって自分のことなのに、夢のことなのに
そう思ったり

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