光と百瀬は赤くなり始めた空の下を歩く。
百瀬はさりげなく、光の腰に手を当て、挫いた方の足を
庇ってくれるかのように接してくれる。
亜希ちゃんはとってもフレンドリーだ。
絶対ももちゃんの事も気に入ってくれる。
百瀬は手を振って、歩いていった。
光は、家に帰るなり早々に自分の部屋に入る。
制服を脱ぎ、部屋着に着替える。
そして、パソコンを立ち上げる
自分で撮影した彼の写真を見つめる。
パソコンだって、自分の部屋でゆっくり彼を見たいから
頑張ってお小遣いを貯めて買った。
カチッ、と無意識にクリックし次の写真を映す。
映し出されたのは、今回展示する予定の『写真』だ。
メインの可愛い1輪の花、バックに夕暮れ時の空。
そして……たまたま映りこんだ、下校中の“彼”の横顔
メインが花のため、ピントはズレているがそれでも
惹かれてしまう、小さな微笑みに。
……恋せずにはいられなかった。
写真で、遠くじゃなくて……近くで。
お話したい、そっと……触れてみたいな、なんて。
私には距離の縮め方が分からない。
気持ちを素直に伝えられない。
後のことが怖くて、たまらないから。
だからーこうやって写真をとって自分の心を無理やり
満足させようとする。
でも、自分でもわかっている。
今私がやっていることは『盗撮』なんだよね?
はぁ……と溜息をつき、パソコンの電源を切る。
出来ることから少しずつ、こなしていこう。
焦ったら……ダメだ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!