第5話

小湊春市
811
2021/08/27 13:19
火曜日、22時。

私にとって週1回の特別な時間。

何時間も前からソワソワしちゃうんだよね…

プルルルル…プルルルル…

あっ、きたきた!!
私
もしもし?
小湊春市
小湊春市
もしもし!ちょっと遅くなってごめんね
時計を見ると22時5分だった。

ウキウキしながら待ってる時間は全然嫌じゃない。
私
大丈夫だよ!お疲れ様!
小湊春市
小湊春市
あなたこそお疲れ様。
そういえばさ、南野高校1回戦勝ったんだって?おめでとう!
南野高校は私の通っている高校。

神奈川県立の普通の公立高校で私は野球部のマネージャーをしている。

今は秋季大会の真っ最中で、万年初戦敗退の南野高校が奇跡的に勝利を収めたのだった。
私
ありがと!ヒヤヒヤだったけどね(笑)
小湊春市
小湊春市
結果が全てだよ。
なんか、名門野球部の人に言われるとこの言葉の重みがすごいなぁ。

直接会えてないけど、夏の敗戦を経てから春市はまた逞しくなった気がする。
私
そうだよね!
そういえばさ、この前亮ちゃんが連絡くれたんだよ!
小湊春市
小湊春市
兄貴が??
なんて言ってた??
亮ちゃんの話になるとすごい食いついてくる。

このへんは昔と変わってないんだよなぁ〜

ちなみに私の家は小湊家の真向かいにあって、昔から亮ちゃんと春市とは仲がいい。

いわゆる幼なじみ。
私
南野野球部のマネージャーになったの?って
小湊春市
小湊春市
うんうん
私
でも春市のサポートも頼むよ、ってさ
小湊春市
小湊春市
兄貴そんなこと言ってたの?
私
言ってたよ!
てかさ、春市が亮ちゃんに言ったの??
小湊春市
小湊春市
ん?なにを??
なんか未だに口に出すのは恥ずかしいんだけど…
私
私たちが…その、付き合ってること…
言いづらそうにモゾモゾする私とは正反対に春市はあっさりしてた。
小湊春市
小湊春市
言ったよ!
でも兄貴はちょっと勘づいてたっぽいけど
おぉ、恐るべき亮ちゃん。
私
さすが亮ちゃんだね
小湊春市
小湊春市
まぁ、兄貴だから!
あとさ俺も兄貴から聞いた話なんだけどさ…
ちょっと春市の声のトーンが変わった気がした。
気のせいかな?
私
うん、なに??
小湊春市
小湊春市
高校に入ってから告られまくってるってほんと?
ん?告られまくってる?
いや、決してそんなことはないけど…

でも確かに告白はされた、その話亮ちゃんにしたっけな…

頭をフル回転させる。
私
いや、告られまくってはない!
告られたことはあるけど、もちろん断ってるわけだし…
小湊春市
小湊春市
へぇ〜、そうなんだ。
あ、怒ってる。
私
黙っててごめんね。
でも、言ったら心配するかなって思ってさ…
小湊春市
小湊春市
別にいいけど
むっちゃ不機嫌だ。
やばい、何とかしなきゃ!
私
あのね、春市…
小湊春市
小湊春市
今度戻った時、覚悟しといてよね
私
え??
なんかおっかないセリフが聞こえたような…
小湊春市
小湊春市
あなたにはお仕置が必要みたいだから
あぁ、一瞬亮ちゃんが乗り移ったかと思ったよ。
きっと春市は悪い顔して笑ったんだろうな。
私
あの、反省します。
小湊春市
小湊春市
半分は冗談だよ。
じゃあ、俺練習戻るね〜、また来週。
え、半分??

気づいたら通話時間は30分、ほんとあっという間だなぁ。
私
う、うん。おやすみ!
小湊春市
小湊春市
おやすみ!
電話が切れる音がした。

私はスマホをベッドに放り投げて寝転ぶ。

はぁ…お仕置かぁ。

その言葉に私は少しいけない想像をしてしまう。

だめだぁ、邪念だ!!

必死に頭からかき消そうとしても
『あなたにはお仕置が必要みたいだから』
が頭から離れない。

もう、どうしてくれんの…

電話切った後なのに春市が恋しい。

春市も同じ気持ちでいてくれたらいいな。

プリ小説オーディオドラマ