火曜日、22時。
私にとって週1回の特別な時間。
何時間も前からソワソワしちゃうんだよね…
プルルルル…プルルルル…
あっ、きたきた!!
時計を見ると22時5分だった。
ウキウキしながら待ってる時間は全然嫌じゃない。
南野高校は私の通っている高校。
神奈川県立の普通の公立高校で私は野球部のマネージャーをしている。
今は秋季大会の真っ最中で、万年初戦敗退の南野高校が奇跡的に勝利を収めたのだった。
なんか、名門野球部の人に言われるとこの言葉の重みがすごいなぁ。
直接会えてないけど、夏の敗戦を経てから春市はまた逞しくなった気がする。
亮ちゃんの話になるとすごい食いついてくる。
このへんは昔と変わってないんだよなぁ〜
ちなみに私の家は小湊家の真向かいにあって、昔から亮ちゃんと春市とは仲がいい。
いわゆる幼なじみ。
なんか未だに口に出すのは恥ずかしいんだけど…
言いづらそうにモゾモゾする私とは正反対に春市はあっさりしてた。
おぉ、恐るべき亮ちゃん。
ちょっと春市の声のトーンが変わった気がした。
気のせいかな?
ん?告られまくってる?
いや、決してそんなことはないけど…
でも確かに告白はされた、その話亮ちゃんにしたっけな…
頭をフル回転させる。
あ、怒ってる。
むっちゃ不機嫌だ。
やばい、何とかしなきゃ!
なんかおっかないセリフが聞こえたような…
あぁ、一瞬亮ちゃんが乗り移ったかと思ったよ。
きっと春市は悪い顔して笑ったんだろうな。
え、半分??
気づいたら通話時間は30分、ほんとあっという間だなぁ。
電話が切れる音がした。
私はスマホをベッドに放り投げて寝転ぶ。
はぁ…お仕置かぁ。
その言葉に私は少しいけない想像をしてしまう。
だめだぁ、邪念だ!!
必死に頭からかき消そうとしても
『あなたにはお仕置が必要みたいだから』
が頭から離れない。
もう、どうしてくれんの…
電話切った後なのに春市が恋しい。
春市も同じ気持ちでいてくれたらいいな。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。