お化け屋敷を2人で手を繋いで脱出した頃には
すっかり外は暗くなっていた
残す観覧車は綺麗にライトアップされて
周りすらも照らしていた
お化け屋敷を出てからもやけに静かな光太郎がそう言ったので
観覧車前に2人で夕食を食べることにした
夕食を食べながら光太郎が突然そんなことを言い始めた
光太郎は笑ってそう言った
その後も大きな会話は無いまま黙々と食べ続ける2人
ただ私が気にしすぎなのか知らないけど
さっきからずっと気になることがあって。
何とか笑って言ってみたけど
上手く笑えていただろうか
知ってたけどさ。
そもそもファンってだけじゃん私。
光太郎にそんなこと言って困らせていい分際じゃないでしょ。
画面の中の光太郎はいつも笑ってて元気だけど
別にプライベートじゃこれが当たり前かもしれないじゃんか。
舞い上がってたのは、私だけ。
なんでだろ、涙でそう
やっぱり気合い入れてきたの間違いだった
急いで荷物をまとめて夕食代を置いて
その場を立ち去ろうとすると涙がこぼれた
光太郎は何も言わないから
きっとこうなることを望んでたんだ…
突然、私の意思ではなく
足が止まる
と同時に手首に強い力を感じた
振り返ると見たことないくらい怒った光太郎と目が合う
でもその目は悲しそうに見えた
.
光太郎side
俺は自分のことで精一杯なタイプだって自分でも周りからも言われる
今日だってそうだ
好きな子と遊園地って、バカみたいに緊張して
待ち合わせで「待った?」とか彼女みたいだなってにやにやして
本当は1時間前からそのあたりウロウロしてたなんてさすがに恥ずかしくて言えないから
今来たなんてカッコつけてみたり
無駄にテンション高いフリして
勢いに任せて手繋いじゃったり
お化け屋敷は俺にとっては天国みたいなもんで
楽しくないなんて微塵も思ってない
ただ同時に、俺ばっかりあなたが好きみたいで
なんか空回りしてるようにも思えてきて。
あなたに全部知って欲しい
でも立場とか柄にもなく考えてしまって
なかなか言い出せなくて
今俺がこの想い全部言ったとして
あなたは、全部受け止めてくれる?
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。