陸さん…
陸くんが玄関のドアを開けてくれて 、
ゆっくり家に入る 。
ずっと外に居たからかな 。
ちょっと疲れたな 。
ふかふかのソファに座ると 、
さっきの事を思い出して胸が痛くなった 。
そんな時 、
なんて言いながら 、
さらっと自分の上着を掛けてくれた 。
さっきと同じ匂い 。
香水とかそういうバチバチにキメた匂いじゃない 。
陸くんらしい 、優しい匂い 。
パパの匂いとは大違いだ 。
なんて 、困った顔で笑う陸くんを見て 、
余計に胸が締め付けられる 。
これだから私は 。
人と関わらない方がいいんだな 。
きっともう 、人を好きになる事も 、
彼氏が出来ることも 、
結婚も子供も 。
きっと叶わない 。
全部 、パパのせいだ 。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。