驚きのあまり声も出ない私の頭を 、
陸くんの手が優しく撫でる 。
そう言って 、自分の胸に引き寄せていた頭を少しだけ離すと 、
そのまま私の身体を抱き寄せる 。
陸くんに言われて 、自分が震えている事に気付いた 。
怖くないの言えば嘘になる 。
少しでも気を抜いたら涙が溢れそうになる 。
でもそれより 、
なんでか分からないけど 、
もう少しだけこうしていたいと 、
そう思ったのに … 。
涙が溢れて止まらなくなる 。
私の涙で 、陸くんの服は濡れていて 、
泣いてるところを見られたくなくて 、
私は陸くんを突き放した 。
ごめんなさい 、陸くん 。
私にはまだ 、早かったみたい 。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!