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第13話

塩対応教師は極甘対応彼氏になりました
4,887
2019/08/25 04:09
【公園】
莉の香
莉の香
え……?
莉の香
莉の香
でも、お店で
紫崎しばさきに抱きしめられながら、莉の香りのかは疑問を口にする。
先日訪れた雑貨屋の店員は、紫崎が香子こうこのためにお香を購入していると言っていたが……。
紫崎
紫崎
あの店に行ったのか
紫崎
紫崎
お前が俺の真似をして
一筆箋に焚きしめたのは、
茉莉花まつりかだろう?
莉の香
莉の香
はい。スティック状のお香で、
茉莉花まつりかはジャスミンのことだって
紫崎
紫崎
ああ
紫崎
紫崎
俺は、白沢しらさわのために茉莉花の香を買った
紫崎
紫崎
いつも買うのは、その隣にある
白檀びゃくだんの匂い袋だ
莉の香
莉の香
……!
莉の香
莉の香
じゃあ、香子さんのたもとに入れてるのは
紫崎
紫崎
匂い袋のほうだな。

半年に一度ほど、新しいものを
購入し、交換している
紫崎
紫崎
茉莉花の香は、お前への手紙に
香りをつけようと、
初めて買ったものなんだ
紫崎
紫崎
白く凛とした、
茉莉花の花の香り——
紫崎
紫崎
お前に、莉の香に
ぴったりの香りだろう?
莉の香
莉の香
先生……!
紫崎に抱きしめられたままの莉の香は、喜びに瞼を震わせた。
そんな莉の香を、紫崎はさらに強く抱きしめる。
紫崎
紫崎
俺の服にも、香りが移って
しまったんだな
莉の香
莉の香
……やさしくて、
とてもいい香りです
莉の香の言葉に、紫崎はふっと息をつく。そして。
紫崎
紫崎
俺は、お前の香りも好きだぞ
莉の香
莉の香
私、何もつけてませんよ?
腕が緩められ、訝る莉の香は解放された。
そして紫崎の指が、そっと髪に差し入れられる。
紫崎
紫崎
白沢の……いいや、
莉の香のしっとりとした黒髪……
紫崎
紫崎
——とてもいい香りだ
紫崎は指に髪束を絡め、持ち上げる。
それから、そのまま口元へと近づけた。
莉の香
莉の香
は、恥ずかしい……です
莉の香は頬を赤らめて、わずかに身を引く。
すると紫崎は、口の端を上げてにやりと微笑み、そして。
莉の香
莉の香
……っ!!
莉の香は声にならない声を漏らした。
——紫崎のくちびるが、莉の香の髪に触れている。
まるで騎士が淑女の手の甲にキスをするように、
紫崎は莉の香の髪にくちづけていたのだ。
紫崎
紫崎
ああ、もっと……お前の髪を堪能させてくれ
莉の香
莉の香
あ……っ
それから莉の香の腕を取り、再び抱き寄せる。
紫崎
紫崎
ほら、この……地肌に近い、
根元のほうも……
莉の香
莉の香
〜〜……っ!!
髪を指先で掻き分けられ、耳の近く、根元のあたりにくちびるを寄せられる。
なぜだかぞくぞくとした感覚が体を駆け抜け、莉の香はぎゅっと目を瞑った。
莉の香
莉の香
……や、やめ、て……っ
莉の香は必死に懇願する。
——きっと今自分は、顔を真っ赤にしているのだと思う。
紫崎
紫崎
ずいぶんと色っぽい表情をするんだな
莉の香
莉の香
〜〜っっ
紫崎
紫崎
もしかして
紫崎は莉の香の耳元にくちびるを寄せたまま、吐息にのせてささやく。
紫崎
紫崎
もしかして、この間みたいに……
紫崎
紫崎
くちびるにされたかったのか?
莉の香
莉の香
——っっ!!
莉の香は大きく肩を震わせる。すると紫崎は、喉の奥でクッと笑った。
そののち、ようやく莉の香の腕を放してくれる。
莉の香
莉の香
先、生……っ
莉の香が抗議すると、彼は。
紫崎
紫崎
まぁ、卒業までは髪だけで
我慢させてもらおう
にやりと笑って、紫崎はうそぶいた。
莉の香
莉の香
〜〜っ、いじわる……っっ
紫崎
紫崎
ああ、そうだな
莉の香は涙目になってさらに抗議するが、紫崎は意に介さない。
莉の香
莉の香
へ、変態……っ
ついにそう罵ってしまう。
……けれど。
紫崎
紫崎
そうだぞ、莉の香。
俺は黒髪ロングフェチの変態だ
紫崎は意に介さないどころか、自慢げに宣言した。
紫崎
紫崎
だがな
紫崎は瞳を意地悪く細め、だけど嬉しげに微笑んで。
紫崎
紫崎
変態の俺を好きなお前だって、

……変態なんじゃないか?
莉の香
莉の香
ううっ
紫崎
紫崎
どうだ、莉の香
紫崎
紫崎
俺のことが、好きなんだろう?
紫崎がからかいを込めて莉の香を見つめてくる。
莉の香
莉の香
(——先生は)
莉の香は眉根を寄せて紫崎を見上げた。
莉の香
莉の香
(先生は、ずるい)
莉の香
莉の香
(塩対応だったのに突然甘くなったり、
……強引だったり)
莉の香
莉の香
(私は振り回されてばかり。

……だけど——)
莉の香
莉の香
先生……
胸に込み上げる、熱い想いがある。
その名を呼ぶだけで、溢れてしまう感情がある。
莉の香
莉の香
……好き……
まだ頬を熱くしたまま、莉の香はそっと紫崎に告げる。
すると紫崎は、満足そうに微笑んだ。
紫崎
紫崎
ああ——俺もだ
紫崎
紫崎
……愛してる、莉の香


【おわり】

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